はじめて「かがみよかがみ」にエッセイを投稿して掲載していただいたのは、約3年半前。26歳のときだった。
そのころの私は、文章を書くことが好きで、いつか仕事にできたらいいなと夢見ながらも、まったく異なる分野の仕事に就いていた。
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「好きなこと」を仕事にして、それが日常や義務になってしまったら、好きなことも好きではなくなってしまうのではないか。
そもそも、私の書く能力は、世間に通用しないのではないか。
書くことを仕事にしたとして、自分には書く能力がないということを突きつけられたら、立ち直れないかもしれない。
そんな不安が渦巻いていて、新しい世界になかなか踏み出せずにいた。
そんなときに友人に教えてもらったサイトが「かがみよかがみ」だった。編集部の方たちに読んでいただいた上で掲載されるサイトだから、誰でも投稿できるブログとは違う特別感がある。そして何よりも、同世代の女性たちが書いたエッセイを掲載する場ということで、私みたいな「普通の」会社員でも書いていいんだ!という安心感があった。彼女たちのエッセイを読んで共感しながら、私も一気にエッセイを書き上げた。
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自分の書いたエッセイをドキドキしながら「かがみよかがみ」の投稿フォームで送信したとき、掲載の連絡をいただいたとき、そして実際に掲載されている自分のエッセイを見たとき。それぞれの場面で味わった高揚感は、今も鮮明に思い出せる。
それ以降も、過去に感情を強く揺さぶられた経験を自分の言葉で書き連ねて、いくつかのエッセイを掲載させてもらってきた。ランキングの上位に自分のエッセイが掲載されていたときにはとても驚いたけれど、自分の書いた文章をたくさんの人に読んでもらえたという喜びで胸がいっぱいになった。
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そこから紆余曲折はあったものの、私は現在、転職先の会社で文章を書いて発信する仕事をしている。
仕事で文章を書くようになると、趣味で書いていたころとは違い、自分の書きたいことを書けなかったり、自分の能力の限界を感じたりすることもある。
でも、踏み出す前の自分が抱えていた、「好きなことを仕事にしたら、嫌になってしまうのではないか」という不安は杞憂だった。どんな言葉で思いを届けようかと模索したり、他の人が書いた文章に圧倒され、意欲が書きたてられたりといった毎日を送っている。
転職する前からは考えられないくらい、たくさんの人との出会いがあり、自分が目にする世界も大きく変わっていった。
あのときにエッセイを投稿してほんのちょっと踏み出したことがきっかけで、今の私はここまで遠く離れた場所にまで来られたのだと感じている。
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来月私は30歳になり、かがみすとを卒業する。きっと、これがここで書く最後のエッセイになる。
もしもこの先、書くことで私がもっと遠いところに辿り着けたとしても、はじめてエッセイが掲載されたときの感動は絶対に忘れたくない。
あのとき踏み出した小さな一歩を胸に、私はこれからも文章を書き続けていく。