不穏なニュースが多いと思う。ロシアとウクライナ、イスラエルとパレスチナ、そして台湾。有事の影に中国とアメリカが潜んでいる。日本も決して他人事ではない。
国際情勢が激化するのに比例して、Xでも討論に火花が散る。日本も近々巻き込まれるとか、陰謀論がどうとか、人の数だけ真実があって、メディアさえ信じられない今では何が本当で何が嘘か、誰かを信じればいいのかさえ分からない。分かるのは、決して良い方向へは向かっていないということだけ。
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そんな最中でもオリンピックは開催されるから不思議だ。日本だけじゃなく、世界全土がピリついているはずなのに、そんな修羅場でもスポーツマンシップは熱い。7月30日現在、テレビをつければオリンピック、新聞の一面を飾るのもオリンピックだ。
私はというと、オリンピックにさほど興味がなく、中継があってもNetflixを観る始末。翌日の朝、情報番組で誰かがメダルを獲ったと知っても驚きもしなければ喜びもない。出勤すれば同じ職場の従業員同士が毎日の習慣かのごとく、朝の情報番組と同じことを共有しあう。金獲ったねぇ!なんて盛り上がっている後ろをそそくさと通り、自分のロッカーへと辿り着く。私は会話に入れない。いや、世界の熱狂の輪に入ろうとしていない。
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それでもふと思うことがある。柔道をやっている人は柔道が好きなのだろう。柔道を応援している人も、同じく柔道が好きなのだろう。調べてみたところ、柔道は今や200カ国以上で親しまれていて、競技人口は2000万人以上と推定されているらしい。
私は日本人で、例えば世界全体で争いが起これば「チーム日本」に分類されて一緒に戦うことになる。しかし、チーム編成が「チーム柔道好き」や「チーム野球好き」になれば、私はどちらにも分類されず、強いて言えば「チームバドミントン好き」に所属するだろう。きっとそこにはロシア人もウクライナ人も、名前も知らない国の人さえいる。国ごとでは敵だったかもしれない相手が、たちまち仲間になるのだ。
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柔道が好きというだけで、戦争は止められないものだろうか。私は小籠包もボルシチもベーグルも好きだけど、それだけで世界の人たちと仲良くなることは難しいだろうか。
好きという気持ちは偉大だと思う。好きな人がいるだけで頑張れるし、夜ご飯が好きなメニューというだけでも頑張れる。きっとそんなモチベーションの持ち様は世界共通だ。
スポーツマンシップに則ろうとしないこんな小娘でもそんな単純なことを考えるのだから、オリンピックに悔し涙を流して歓喜して、相手選手へ敬意を示せるスポーツ好きには簡単なことだと思うのだ。国際情勢が一筋縄ではないことは承知しているのだが、まずは小さなところから。自分がムカついた相手も実は自分と同じものを好きかもしれない、と一歩躊躇することで解決の糸口が見えることもあるはずだ。
そういうことを、パリオリンピックの熱に当てられて密かに思った。