韓国、フランス、クロアチア。他にも行きたい国がたくさんある。
でも、円安や紛争、犯罪などの心配事が多くて、海外旅行の夢はなかなか実現しそうにない。テレビで海外のニュースを見るたびに「怖い」「もう行けないかも」などと思ってしまう。国内のように、もっと気楽に安心して旅行できたらいいのに。
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今はそんな風に考えている私だけど、実は1度だけ海外に行ったことがある。きっかけは、私がある短大を受験するときのことだった。その短大は毎年、アメリカへの語学研修の参加者を募集していた。私は何となく、願書と一緒にその応募書類を提出した。
数ヵ月後、受験の結果が出た。第一希望の大学には落ちてしまい、その短大と名前もろくに知らない大学に合格した。短大から大きな封筒が届いたので中身を見ると、合格通知や入学に向けてのもの以外に、数枚の書類が入っていた。それを封筒から出して見た瞬間、私は母のいる部屋へ走っていった。
その書類は、語学研修についてのもの。そして、私が参加者の1人に選ばれた旨が書かれていた。本命の大学に落ちたショックで、応募したことすら忘れていた。
全員が行けるわけではなし、「海外に行ってみたいし、選ばれたらラッキー」程度にしか思っていなかったのに、まさか本当に行けることになるなんて……。家族みんなが驚き、喜び、その日の我が家は大騒ぎだった。
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月日は流れて、私は東京に引っ越し、短大へ入学した。
短大での生活に慣れる暇もなく、1ヵ月後には渡米。日本とは異なる文化や習慣、英語だけでの会話。きっと大変かもしれないけれど、1人じゃないからきっと大丈夫。アメリカで学びながら楽しんで来よう。飛行機を降りるまでは、人生初の海外にワクワクしていた。
アメリカに着いて他の研修生たちと一緒に歩いていると、現地の人にジロジロ見られたり、大統領のポスターを持ったおじさんに話し掛けられたりした。以前、学校の授業でアメリカとの戦争について習っていたし、小学生のときに図書室で読んだ「はだしのゲン」の印象が強かったので、それを思い出して急に怖くなった。
もしかしたら、私たちをよく思わない現地の人もいるかもしれない。「日本人だから、何かされたらどうしよう」と一気に不安になった。
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研修はカリフォルニア州にある姉妹校ということもあり、キャンパス内では安心して過ごせていた。また、私たち研修生をお世話してくれる学生たちや講師陣はみんな活気があり、冗談を言って笑わせてくれたり、困ったときには寄り添ってくれたりした。
研修に集中しつつも、安心感ですっかり力が抜け切っていた。でも、カリキュラムの中には大学の敷地から出て行うものがいくつかあったので、そのことを考えるとまた不安な気持ちになってしまった。
ハリウッドでの観光や劇鑑賞、ゲッティ美術館での芸術鑑賞、独立記念日のイベント。それからホームステイもあった。研修の終わり間近には、ディズニーランドにも行った。
今まで体験したことのないことばかりで、どれも貴重な経験となった。しかし、それだけではない。私の不安は、取り越し苦労だったことに気づいた。
当たり前だけど、どのときも現地の人たちとの交流があった。私が頑張って話す英語を笑わず、向き合って会話してくれた。買い物でレジに並ぶと「こんにちは」と、従業員の方が日本語で話し掛けてくれた。研修生みんなで街中を歩いていると、現地のたくさんの人たちが笑顔で手を振ってくれた。「アメリカにはこんなに優しくて温かい人たちがいるんだ」と、驚きよりも嬉しさが上回った。
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実際に現地へ行ってみないと、分からないことがたくさんある。少しの知識だけで「怖い」と思ったり、負のイメージのままで見てしまったりするのは勿体ない。
私が行ったのは、アメリカのほんの一部の場所。だから、まだ知らない部分もあるし、みんながみんな優しくて温かい人とは限らない。それでも、アメリカには「またここに戻って来たい」と思わせてくれた人たちがいる。
国内旅行のように自分たちで計画した旅や、ノープランでの弾丸旅はハードルが高い。だから、もう少し私の生活が落ち着いてきたら、友人と一緒にツアーで行くことから始めてみようと思う。