わたしの『学び』の先には新たな世界への好奇心の扉が開いていた。
昨年の秋から地元の料理教室で開催されているワイン会に毎月通っている。両親がワイン好きということもあり実家に居た時はよくワインを飲んでいたので、一番好きなお酒はワインだ。だけどワインについては「フランスが一番有名でしょ」「北海道のワインの生産地だったら池田町だよね」と言った表面的な知識しかなかった。
だから、ワインショップに行ってもワインの葡萄のことや産地による味の違いがわからずお店の人のおすすめやカタログの説明文を見て直感で買っていた。
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ワイン会のことを知ったきっかけは地元のタウン誌の広告だった「余市のワインを飲みましょう!」という文面が書かれていて値段も手頃だったので申し込み参加した。
そこのワイン会はアパートの1室を教室にしているアットホームな感じで私以外に3人ほど前から参加しているご婦人方がいた。自然に私が一番歳下となってしまったが、ご婦人方も優しくすぐに打ち解けた。
だけど、何より先生の話すワインの産地や葡萄の種類に自然に興味を持った。葡萄にも色々な種類があり、同じ葡萄でもワインの産地では味が全く違うということを講義と実飲で実感した。
「ワインってこんなに面白い飲み物なんだ……!」とその奥深さにたちまちとりこになってしまった。
2回目の参加で「〇〇さん、ブロンズクラスの受験に興味ない?」と先生に聞かれた。普通ソムリエの資格は飲食店に勤務していないと取得できないが、一般人でも取得できる資格として「ワイン検定」があるということを教えてもらい、一番初歩的な“ブロンズクラス”の試験が4月にあるということで勧められた。
最初は「勉強するより他のことをしたいからなぁ」と少し考えたが、「ブロンズクラスの勉強をしたらもっとワインについて知ることができる!」と考え直し受験することになった。
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テキストを購入し勉強し始めた。ブロンズクラスはワインの作り方や葡萄の種類や料理のペアリングなどの知識を中心に問われる。
ほんのりとした知識しかなかったワインの作り方やピノ・ノワールぐらいしか知らなかった葡萄の種類も、勉強していくことで知識が次々とアップデートされていくのを感じる。
例えば、アルバリーニョという葡萄はスペインで“海のワイン”と呼ばれる爽やかな酸味のある白ワインになるということを学んだり、ボルドーのワインはカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローとカベルネ・フランなどを混ぜたワインを中心に作っていることを知った。
今まで何となく飲んでいたワインにも葡萄の品種が産地に根付くまでの歴史があり、葡萄や土地がワインの風味や味に強い影響を与えることを知ると、ただワインが奥深い飲み物というだけではなく地理や歴史などの分野にも繋がっていることに気がついた。
私は学生の時地理には正直興味が持てなかった。だけど温暖性気候の風がワインにまろやかな味わいを与える、チリやアルゼンチンなどの国は乾燥した風が吹き害虫がつかないので葡萄が病気になりにくく、フランスなどの旧世界では作れない葡萄の品種があるなどのことを聞くと「気候ってワインと強い関係があるんだ!」となり、再び地理を学んでみたくなった。
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そしてブロンズクラスの試験が終わる頃にはワインの知識がだいぶついたのと同時に海洋性気候などの地理のワードがどんな意味を持っているのか自然な知識がついた。
前に見たドラマで落ちこぼれの男の子が勉強するのにラップを使って覚えていたというシーンを思い出した。
私が苦手だった地理に対して興味を持てる様になったのはワインを通して学んだからだ。
ワインはただの飲み物というだけでなく、私の世界を広げてくれる魔法の飲み物だった。今はシルバークラスの勉強をしている。試験が終わる頃には新たな知識がどのくらいつくのか楽しみだ。