私は今年で23歳になった。恋愛経験はない。私と同い年で同じく恋愛経験がない友人と「女の賞味期限は25まで」という言説の話になった。残り2年となると焦りが生じる。

その友人はマッチングアプリを通じて何人かの男性と会っているという。友人が語る様々な男性との出会いに興味を持った私はマッチングアプリをインストールすることにした。

私は恋愛経験がないが、そもそも恋愛にあまり興味がない。相手の性別を問わず、恋愛的に好きになったりキュンとしたりということがこれまでの人生にはなかった。

しかし、いろんな人に会って話してみたい気持ちはあったため、マッチングアプリの目標を「とりあえず誰かと対面で会う」ことに設定した。

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マッチングアプリを始めて数日。とある男性から熱心にアプローチをかけられた。彼は「俺、頭のいい人が好きなんすよね」と頻繁に口にした。どうやら私の学歴に惹かれたらしい。

私は「話題のきっかけになれば」と思いマッチングアプリ内のタグで出身大学の名前をつけていた。しかし、いざ「○○大学卒の女性」として見られると、あまり気持ちの良いものではなかった。私の内面ではなく社会的な肩書きでしか見られていないような気がした。

彼からの要望で通話をすることになった。お互いの呼び方を決めた。それぞれの下の名前にくんちゃんをつけることになった。

お互いを呼んでみた。彼は嬉しそうだったが、私はまたしても気持ち悪さを感じてしまった。お互いの名前を呼び合うだけで嬉しい、という感覚がピンと来なかった。

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その日の夜、再び彼から通話の誘いを受けた。断る理由もなかったため受けることにした。彼は先ほど決めたはずの呼び方を無視して、私を下の名前の呼び捨てで呼んできた。私は、彼の距離の詰め方に怖くなってしまった。

私は彼の熱量に応えることができないと思い、そっけない相槌を打っていた。それでも彼の話し声はとても嬉しそうだった。付き合うことになったらどこに行きたいか、何をしたいかなどをたくさん話してくれた。

途中で私は「あ、この人は私と話せていることではなく、女性と話せて嬉しいんだ」と気づいてしまった。私でなければダメな理由が彼の中にないように感じてしまったのだ。

通話の後、私は彼にお付き合いすることはできないと伝え、アプリからも退会した。目標を達成することはできなかった。

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その後、私は女性専用のマッチングアプリを始めた。そのアプリは主流のアプリとは異なり、ユーザーの顔や年齢がリストになって表示されることはない。その代わりにそれぞれのつぶやきがTwitterのように流れてくる。そのつぶやきを通じて相手のことを知っていくことができるというものだった。

加えて、主なターゲットがレズビアンやバイセクシャルなど女性が恋愛対象に入る女性であることもあり、セクシャルマイノリティへの理解度が高い空間が形成されている。

私は、他者に恋愛的に惹かれない「アロマンティック」を自認している。このアプリにはアロマンティックの方も多く、私はアプリを始めてから4ヶ月で2人のアロマンティックの方にお会いすることができた。

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多くのマッチングアプリは恋愛対象として見る/見られる関係性が当たり前になっている。恋愛感情を持たない私にとって、それはあまり居心地が良くなかった。

また、顔や年齢、身長などの自分自身の努力では変えることが難しいもの、加えて外見的なもので自分を判断されることは私にとってはとても嫌だった。

現在使っているマッチングアプリではそのようなことはなく、つぶやきを通じてお互いのことを知っていくことができる。私はこのマッチングアプリに出会えてよかったと思う。