音楽が好きだ。どんなジャンルも分け隔てなく聴く。ポップスやロックを始めとして、演歌も聴くしクラシックも聴く。

私がめて買ってもらったCDはZONEの「secret base〜君がくれたもの〜」で、擦って何度も聴いていたがそれ以外にも色んな曲を聴いてきた。
小学校の5年間はピアノを習っていた。発表会で人前でミスらないで弾くだけでも精一杯で、鍵盤が手汗まみれになった。千と千尋の神隠しの主題歌「いつも何度でも」を選んだものの、自分の演奏が録音されたCDを聴いたら外しまくっておりあまりにも恥ずかしくて、スピーカーの前で赤面した。
1年間三味線を習っていたこともあるが、「会津磐梯山」という民謡曲を1曲やっと弾けるようになっただけで、特に三味線に興味もなかったので辞めてしまった。

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中学校に上がるとロックにハマって、お年玉でエレキギターを手に入れた。イオンの楽器店でストラトキャスタータイプの赤いギターを買った。ピックはただデザインが格好良いという理由で1曲も聴いたことのないL'Arc〜en〜Cielのユニオンジャック柄ものを選んだ。
ギターは独学で少しだけ弾けるようになった。コードはネットや楽譜を見て覚えて、ギターソロの部分は耳コピで何となく自己満で演奏した。エレキギターの不良でセクシーな音色が今でも好きだ。

不登校だったため日中は家に1人きりで他に誰も居なかったし、隣近所も皆仕事や学校で出払っていてアンプを繋いで演奏し放題だった。

唯一気になったのが、うちの目の前にある畑を耕しているストローハットを被ったおじさんだった。おじさんは喫煙者で、いつもタバコをプカプカとふかしては咳をしていた。2階の窓からおじさんの様子を伺いながら、掻き鳴らした。
たまに視線がこちらに長時間向いている時があったので、そういう時はアンプを外して演奏した。

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高校に上がると、人間椅子というハードロックバンドにハマりライブに何回か参加した。ネットで江戸川乱歩のことを調べていたら辿り着いたのだったと思う。人間椅子の曲をギターで弾くのはかなり難しくて、左指の先っちょの皮膚が硬くなって痛かったがそれすらも嬉しかった。

そして、放課後の1人カラオケにもハマった。高校という、つまらないハコでの時間を吹き飛ばすように歌った。友達と行く時もあったが、その時は本気を出せないので楽しくない。

おそらく世間ではカラオケというのは一種のコミュニケーションツールだ。孤独にガチでやる人の方が希少なのである。それも私の場合自己満だから末恐ろしい。
93、4点を叩き出すと嬉しくて写真を撮ったりしていた。

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それから8年以上経った今、また日中暇になったのでカラオケアプリを始めた。採点機能もついていて、ユーザー同士がいいねやコメントをすることもできる。加工機能もあるが私は無加工でひっくい声のままあげている。それが逆に良いのかフォロワーが増えていく。人に褒められると嬉しくなってどんどんあげてしまう。
底なしの承認欲求が、束の間満たされる気がして。

お褒めの言葉を頂くということは、まあそれなりに歌が得意ということなんだと思う。
高校時代の私がひとカラで過ごした百何十時間は、無駄じゃなかったみたいだ。
ストローハットのおじさんは、いつの間にか全く姿を見せなくなった。どこかで元気にしていたらいいのだけれど。