高校生のころ、非の打ちどころがないくらい完璧で美しい友達がいた。

「成績優秀」「眉目秀麗」という言葉が似合う子で、運動神経も抜群、そしてとっても素直で心が清らかな、本当に明るくて素敵な子だった。
その子に憧れる人間はたくさんいても、嫌う人間は1人もいなかったように思う。私にとってはこの世の「希望」を詰め込んだような存在だった。

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高校生の頃の私は今と同じくオタクで、いわゆる「陰キャ」「3軍」だった。
いじめられることはなかったが、クラスの真ん中でウェイウェイはしゃぎたい子にとっては「ノリ悪いな~」と思われる存在だったと思う。
実際にわたしはクラスの端っこの方で見つからないようにひっそり生きていた。

『あの子』と私は高校1年のときにクラスが一緒だった。
名前順が近いわけでもなく、部活が同じわけでもなかったのだが、何か話しているうちにお互いアイドルが好きだとわかり、よく話すようになった。

あれだけ完璧超人な『あの子』が私と同じくアイドルが好きというだけでも勝手に親近感があったのだが、アイドルの話をしているときの『あの子』はとてもイキイキしていて、いつも以上にキラキラまぶしく笑っていて、好きなものがあるって素敵だなと思わせてくれた。

この子をこんなにも夢中にさせるアイドルはどんなものなのかと気になって、動画を見たりもした。私の世界を広げてくれた彼女には感謝しかない。

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2年生、3年生のときは同じクラスになれなかったが、私の高校はアイドル好きが異様に少なかったので、すれ違うと彼女からよく話しかけてくれた。

声をかけてくれる時の言葉は「久しぶり~!」でも「最近どう~?」などではなく、「○○(アイドルの番組)見た?」とか「ちょ、聞いて、△△(推し)がさ!」だった。
こんなキラキラな彼女も私と同じアイドルオタクなんだなぁと妙に感動したことを覚えている。

でも、いくらアイドルが好きな者同士と言えど推してるアイドルは違うし、こんなクソオタクになんでこんなに話しかけてくれるんだろう、優しすぎるだろ……女神かよ……と不思議だったが、
彼女にとってはそれだけアイドルの話をする時間が大切で、アイドルの話ができる同志が周りにいなかったのかもしれないなと今になると思う。

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彼女はいつも「話してるとほんまおもろいわ~」と言ってくれていた。
彼女がびっくりするほど笑い上戸だったのもあるが、私のTwitter仕込みのオタク喋りを聞くことが、キラキラ1軍でおしゃれであることが当たり前とされていた彼女にとっては新鮮なことだったのかもしれない。

今となっては彼女がどうしているかわからない。私のことなんて思い出にすらないかもしれないけれど。
少なくとも私はあなたと好きなアイドルのことを話してたな~って今も思い出せるくらい楽しかったよ!ありがとう!
今のあなたもイキイキと笑ってくれていますように。