人生で初めて、寝落ち電話をした。

その子は小学生の時、転校してきた同級生で、この夏みんなでタイムカプセルを開けたのを機に、8年ぶりに連絡を取るようになったのだった。

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中学から私立に進んだ私にとって、地元の、しかも小学生の時の同級生というのは家族みたいな安心感のある存在だった。まだ、周りの目を気にする歳でもなかったし、少し田舎で遊び方も影と自販機を求めてみんなで探検するといった地味なものだった。

私はその着飾らない感じが好きだった。でも、だからといって着飾った都会感のある暮らしが嫌いな訳では無い。空調の効いたモールでフラペチーノでも飲みながらお喋り、夜は仕事仲間と飲み会、そんなのだってべつに嫌じゃない。

都会の仲間とは、ビジネスの話、将来のこと、そういう、大人になったからこそ考えなければいけないことや悩むようになったことを話せるから。地元の子たちはその点、おおらかというか呑気で、話す気になれないのだ。

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さて、話を戻すが、電話をすることになったその人とは、小学生の時そこそこ仲が良かったと思う。2人で一緒に遊ぶとかはなかったけれど、私がちょっかいをかけてじゃれるということをよくしていた。

最近になってから、インスタでその人が今、インターンをしたり、ヒッチハイクの旅をしたりしているのは知った。私の憧れる、行動力のある人間をそのまま体現したような人だった。

でも、少し不安だった。中身が変わってるんじゃないか。私が好きだった面白くていじりがいのあるその子は、すっかり都会の人になってしまっているんじゃないか。私よりずっと先にいってしまったんじゃないか。だから私も話してみたいと思っていた。

話し始めると、とても8年ぶりとは思えないほど会話が弾んだ。インターンのこと、将来のこと、小学生の時のこと。中身はちっとも変わってなかった。変わってないのに、仕事場でするような会話ができたのが嬉しかった。それを言うと、同じ言葉を返すと言ってくれた。自分の素が出せて、軽口も真剣なことも言える相手。辛かった時、私がずっと求めていた相手がすぐ近くにいた。

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いつの間にか、あっという間に時間が過ぎた。22時から話し始めて、4時前になっていた。それなのにまだ話したいことがたくさんあった。

でも、さすがにもう眠い。お互い明日、というか今日もやることがある。また、話したいねと言い合いながら電話を切った。ちゃんと楽しかった。でも、次があるかは分からない。8年話してないということは、これからも話さなくてもいいということかもしれないし、この世にこの人じゃないとダメだということはないのだから。

それでも、私はこのつながりをフェードアウトさせたくない。この人じゃなくてもいいのかもしれない。でも私は思い出のあるこの人とまた話したい。

朝だか夜だか分からない不思議な時間に、寝ているか起きているか分からない頭で、強くそう思いながら私は眠った。