小さかった私の大きな夢。私は夢見る少女だった。
現実主義な母親と理想主義な父親から産まれたプリンセス候補、それが私だ。
あの頃はプリキュアやディズニープリンセスが流行っており大体の女の子の将来のなりたい姿が、おひめさまだった。

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「おひめさまは、お利口さんにするよ」

落ち着きのない私に大人が使っていた必殺技。この一言でお淑やかなポーズをとるくらいにはおひめさまに憧れていた。
大人になった私はというと、残念ながら母親に似て現実主義者だ。未練なくおひめさま候補を辞退し、サックリ看護師として就職したのであった。

話は変わるが、私には持病がある。
日々の生活の中で定期的にくる発作。その名も〝可愛くなりたい病〟だ。

周りからかわいいとチヤホヤされて育ちいつしか自分も、可愛くなりたい、可愛い姿でいたいと願うようになった。
おひめさま候補(笑)時代から、フリルやレースの服は勿論、ふわふわと膨らむ可愛いスカートが大好きだった。
バイトをして初めて自分のお金でフリルのついたワンピースを買った時、ひっそりと可愛いに満たされていったことを覚えている。
何となく、周りの目が恥ずかしく思ってしまい最近増殖している量産型を模している。しかし、夢のおひめさまからはほど遠く、5年以上も量産型以上ロリータ未満の中途半端な格好を続けていた。

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そんな今の私には密かな夢がある。
まさかの、「おひめさまになりたい」である。
これは、自分の中で徐々に本気で叶えたい夢になっていった。

ストレス社会の現代で人類が元気かどうかはさておき、平均寿命は伸び人生100年時代となった。
私の職場では、80代、90代と話をする機会が多くあり毎回言われる「若いうちにやりたい事をやりなさい」という言葉が気になっていた。

その当時から、ずっと考えていた。〝若いうち〟にできること、したいことってなんだろう?
そして、老いてしまう前におひめさまになりたいという夢を実現させられたらと思った。
「職業:おひめさま」にはなれなかったけれど、どんな形であれ過去にあこがれを抱いたものに近しいロリータファッションを着てみたいと思った。

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しかし、私に残された姫でいられる時間はどのくらいだろう?
20代前半の今、中高生から言わせればオバサン。
毎日、何万人もの自分より更に若いおひめさまたちが産まれている。
おひめさまの時間は短い。加齢に負け、世間の普通はこうだろうという思想に負け、今まで踏み出せずにいた。

「おひめさまに、なっちゃおう」

憧れた白雪姫、シンデレラ、オーロラ姫。
フリフリふわふわのワンピースに袖を通し裾を翻し笑う自分の姿をイメージする。

「おひめさま、まだ間に合うのでは?」

小さかったおひめさまは、かなり逞しく育ってしまったけど。
まだ、間に合う。
大丈夫かな、似合わなかったら嫌だな、不安不安不安だ!安くも無いし、着られるかなぁなんて、ちょっと考えてしまう時もある。

でも、若い自分の貴重な〝今〟を無駄にはしたくない。どんなことでも、どうなっちゃっでもやってみたい。そう思っている。

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まだ、有名なロリータファッションの方を調べて眺めたり、ブランドの服を調べてどこがいいかなぁなんて調べる程度である。
しかし、実現できる環境にあり、夢であるロリータを必ず叶えるつもりである。
20代の〝若さ〟を、今しかない武器を装備して最強に可愛いロリータファッションをいつかしてみようと思う。
踏み出すのは、今しかないから。