どうして育てられないのに子供を産むんだろう。日に日にいらだちと悲しさが、増えていく。
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教育現場や医療現場で働いていると、様々な境遇の子供たちとその親と出会う。
今まで働いてきて、同じクラスの子にいやなことを言ったり、暴力的なことをしたりする子供たちもみてきた。中には友達のものを盗んだり、お店のものを万引きしたりする子供もいた。これは同一人物ではなく、全員別の子供である。
そして、不思議なことに問題行動を起こす親は、必ずといっていいほど、何かしら問題を抱えているのだ。
生活保護同士で結婚し、お金がない状況のなか、さらに子供を産む。
その親を持つ子供は絆創膏やシップもろくに買ってもらえていない。
毎日おなかをすかせていて、給食を人の倍食べる。
その子は「うち、貧乏だから」「お金ないから、お母さんがアイコスをメルカリで売ってた」「お金ないから(書道の時間に使う)半紙買えません」と。
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私は煙草を吸ったことがないし、興味もないのでアイコスがメルカリで果たして売れるのか、そもそも本当に売ったのかはわからない。しかし、この子のいうことを信じるなら、
両親ともに生活保護で、たばこを吸っている……たばこに使うお金はあるのに、子供たちの
食費や生活必需品、学校で使う勉強道具を買うお金はない、ということになる。
「はて?」
明らかにお金の使いどころが違うのではないか。
私は決して、生活保護を受けている人たちを否定したいわけではない。ただ、暴力的な子は、しばしば発達障害などを抱えていることもある。そして、そのような子供の親も似たような何かを抱えていることが多い。
学校に提出しなければならない書類の書き方がわからず、学校の事務室まで聞きにくる。
尿検査があることを3回連続で忘れる。大事なお金の振り込みができない、等。
それだけではなく、子供の食事の用意を失念することも多々ある。
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今回お話ししたことは、私が見てきた事例のほんの一部である。
ここでは到底話せない、もっと酷い家庭もある。
だが、親だけが悪いのかと聞かれると、私はそうではないと思う。親の、親。つまり子供たちの祖父母も問題がある場合がほとんどだからだ。子供に対して金銭面で十分な環境を与えられていない親は、子供時代に貧困を経験していることが多い。これが貧困の連鎖か、と感じた。
世の中には、心身ともに健康で、子供を育てることができる体力、能力、経済力がそろっていても、不妊治療中の夫婦もいる。そんななか、何人も産み育てられなくなっている家庭もいる。
この差はなんなのだろう。どうして、どうして。
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子供たちに罪はない。
私は、すべての子供たちに幸せになってほしいと心から願っている。
そのために、毎日悲しくても、悔しくても、どれだけ努力しても私たちの給料が上がらなくても、日々働いている。考えている。動いている。
声を上げないといけない。この現状を一人でも多くの人に知ってもらいたい。
そして、今一度、「子供を産み育てられる環境」とは何か多くの人に考えてもらいたい。