私は小さい頃から、恐らく平均よりも胸が大きい。ある程度大人になると少しずつ自分の個性というか特徴というか、自分の一部として受け入れられるのだが、生育途中には、自分にはどうしようもできない、デリケートで恥ずかしいもの、変な目で見られる、他人と比較される対象物でしかなかった。
小学生の頃、今よりも痩せていて、同級生の親から「〇〇ちゃんは、ボンキュッボンだね〜」と言われたことがある。大人にとっては褒め言葉なのだろうが、嫌でも気にするようになった。一度気になり始めると、隠したい見られたくないという気持ちが大きくなった。
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長袖を着る秋冬は良くても、夏になって体操服の半袖を着たり、プールの時間にスクール水着を着る時間が苦痛だった。ボディーラインが出てしまう。目立ってしまう。
自意識過剰かもしれない。でも男子に見られている気がする。走っているときに見られたくない。胸を張って立てない。
友人や同級生と胸の話をすることさえも嫌だった。自分は小さいからいいなと言われても返事に困る。私だって好きでなったわけじゃない。もう少し小さいほうがいい。
小さくてコンプレックスを持っている子にとっては、贅沢だと言うかもしれない。でも私には嫌だったから。
中学生まではプールが必須科目だったし、他人の目を気にすることが多かった。いかに隠すかが毎日の課題。こんなもの嬉しくもなんともなかった。
高校生になるとプールの授業は必須ではなくなり、水着を着なくて良くなって一安心。それもあってか、これまでよりも気にする機会は減っていった。
大学生になると、自分の体や性、恋愛感などへの考え方が少し大人にアップデートされていって、段々と自分の体を受け入れられるようになった。
大学には色々な人がいて、同じように胸が大きいことで悩んでいる子との話も弾んだ。
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小学校から高校までは日々の大半を制服か学校のジャージを着て過ごすことが多かったが、大学生になり私服のコーディネートを考える毎日に、また新たな悩みが生まれた。
いいな、かわいいなと思って購入した服を着てみると、何か違う。似合ってない。丸顔も相まって太って見える。胸が大きいと、トップスの手前側が上がり、お腹周りにも空間ができる。少しゆったりとした服では寸胴に見えた。かわいいデザインのブラジャーもあるサイズを境に種類が減る。店にあるマネキンはいつもほっそりして、胸も小さめ。モデルさんだって大概そう。
大きめサイズはあっても、胸が大きい人が似合う洋服は少ない。胸が大きい人が着ると似合う服、をテーマにしているショップもあるけれど、服のテイストは私が好きなものではなかった。大きめサイズの服を着ても、確かにボディーラインをぼやかすことはできるけど、決して痩せては見えないし。
ある時、胸が大きい人は逆にボディーラインが出る服の方がスタイルがよく見える、痩せて見える、という情報を耳にしてからは、今までは隠したくて避けていたピッタリとした服も着てみるようになった。確かにスッキリして見える。胸元が強調されているから、夏にこれだけだと恥ずかしい気もするけれど。
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昨今、何かのPRで胸の誇張されたアニメキャラクターが採用されると、女性の性的搾取だと非難が湧く。私もどちらかと言えばそちら側で、何でもかんでもケチをつけなくてもいいけど、そこまで強調する必要はないよなとも思う。そこにコンプレックスを感じていただけに、強く感じてしまう。
男性目線で描かれるアニメキャラクターは大抵胸が大きくてスタイルも良くて、まさにボンキュッボン。現実世界では同じような体型の女性を探すと、結局行き着くのはグラビアアイドルではないだろうか。同じ女性として素敵だな、かわいいなと思うグラビアアイドルももちろんいるけれど、やっぱり世間一般的な印象として、男性向けの性的対象というイメージが先行してしまう。
男性受けが、女性受けが、というものではなくて、現実世界には様々な体型の人がいるのだから、表現の場でもバランスよく取り入れられたら良いのだと思う。現実世界の商品だってもっとバリエーションがあったらいいと思う。大きいか小さいかで判断される瞬間が少なくなるように。
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この先も悩みが尽きる事は無いんだろうけど、この歳になって、やっと自分の一部として認められるようになってきた。今までこの体で嫌だったこと悲しかったこと、恥ずかしかったことを沢山経験した分だけ、この特徴だからできることとか、似合うものとかそういったものをこれから沢山見つけられたらいいな。