※本エッセイにはサンタクロースについての言及があります。己の中のサンタ像を守りたい方は回れ右!

クリスマスプレゼントとは、親にリクエストした物ではなく、心の中でほしいと願った物をサンタさんが届けてくれるものだと思っていた。
そんな私の中のサンタ像がガラガラと崩れ、がっちり再構築されたのは小学2年生のときである。

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その年代になれば、「サンタはいないよね」「親だよね……」などというような、「自分は信じてないですけどみんなどう~?」という探り合いをしていたように思う。
私はサンタは親であることを頭では理解しているが、心のどこかでほんとにいるんじゃないかと信じたい、そんな子供だった。3歳下の弟がいたので、家族の前ではサンタさんを心から信じている純真な子供ぶっていた。

覚えている限りだと、幼稚園の年長さんのときは好きなキャラクターのまくら、小学1年生のときは漢字辞典をもらった。
どちらも本当にほしくて親にリクエストしたものだったので、枕元にプレゼントを見つけたときは本当に嬉しかった。親からであろうが、サンタからであろうが、欲しいものがもらえるのはラッキー!くらいに思っていた。

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小学2年生になった私は、あるバンドの曲が好きになった。
好きなドラマの主題歌を歌っていただけでなく、聞くのも口ずさむのも大好きな曲をたくさん歌っているバンドだった。
今でいうと「推し」だったのだと思う。ただ当時、今のような音楽サブスクはなく、もしあったとしても小学生が気軽に触れられるものではなかった。音楽に触れる手段としては、CDのみだったように思う。CDを買うか、CDをレンタルするしかなかった。
それを知った私は親に言った。「クリスマスプレゼントはこのバンドのCDがほしい!」

しかし、それと同じくらい好きだったのが、某魔法使いのアニメである。
勝気な性格だが心優しい少女と、気弱だが気高い精神を持つ少女が、立派な魔法使いになるために人間界で修業をするという物語で、当時アニメが放送されていた。
私の世代は小説や漫画、アニメに至るまで、ありとあらゆる魔法使いの物語が存在したのだが、その中でもキラキラとかわいく、でもそれと同時に切なさもあるこのアニメが大好きだった。実際に漫画本として読むのは、病院に置いてあるものなどで、自分で漫画を買ったり、ねだったこともなかった。

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これまた別の作品の話だが、11歳になったら手紙をフクロウが運んできてくれると思っていた純真な私は、「バンドのCDがほしいって親には伝えたけど、サンタさんならきっと漫画をプレゼントしてくれるはず!」と信じ、クリスマスイヴを迎えた。

クリスマスの我が家の定番のごはんは、やわらかくてほろほろの照り焼きチキンとシンプルなカレー。クリスマスが楽しみな理由の8割はこれである。そして食後にはイチゴたっぷりのショートケーキ。この絵にかいたような食卓を家族で囲むのが本当に大好きだった。
そして早めに就寝。この日ばかりは「テレビをもっと見たい!」などわがままを言わずにすんなり眠りについた。

迎えた翌朝、枕元にあったのは好きなバンドのCDだった。
欲しいCDがもらえて嬉しい気持ちと、「心の中を読んでほしいものをくれるサンタなんかいないんだ……」と少しがっかりした気持ちがないまぜになって、どうしたらいいかわからなかった。

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あの頃の両親へ。
めちゃくちゃ中途半端なリアクションをしてしまってごめんなさい。
大人になった今では、子供のクリスマスのためにどれだけ心を砕いてくれていたかわかります。ありがとう。

あのクリスマスに戻れるなら、子供らしく無邪気に喜ぶことを誓います。