生理が重い。
初経は12歳、小柄で細身なのもあって元々不順気味。重くなり始めたのは14歳ごろ、ちょうど身長が伸び始めたあたり。初めて重めの生理が来た時はパニックだった。耐えきれないくらいの腹痛に目の前が真っ白になったし、経血の量も当時にしてはとんでもなく多くて制服を汚した。
それでも早退しなかったのは周りからの視線を気にした意地だったと、今になって思う。そして年々それが普通になり、慣れ、取り繕えるようになった。
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ここ数年の生理は、概ね周期通りにやってくる。前日か初日になると強烈な眠気に襲われて、頭が痛くなる。始まると下腹部が重く痛くなって、腰も痛くなって、吐き気までする。この腹痛・腰痛・吐き気のコンボは大体3日目まで続く。痛すぎて起き上がれなかったことも、出先で動けなくなったことも吐いてしまったこともある。なのに持病の関係でピルは飲めず、鎮痛剤を飲んでも痛みは消えない。漢方とか、湯船に浸かるとか、そういうのも一通り試したけれど、特に改善はしなかった。端的に言えば詰んでいると思う。
ごくわずかな友人だけにしかこのことを話していないから、その人たち以外の前ではできる限り取り繕っている。欠席はもちろん、遅刻も早退も意地でもせず、おかげでほとんどの人には不本意な形でバレたことはない。
でも、からだのあちこちが痛いから姿勢だって悪くなるし、急にトイレに行くから変だとは思う。そういうときの視線が痛い。ぱっと見どこも悪そうに見えないし何のマークも付けてないから、優先席に座るのも気が引ける。わたしが優先席に座ったときに向けられる視線の痛さを知っている。
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不調が理由でままならないからだに向けられる視線は厳しい。体調管理も仕事のうちだと言われる。でも努力してもどうにもならないことってあると思う。甘っちょろい考えだと、自分で思う。だからできる限り人に言わずに耐えて、どうにかして、そのことを心のどこかで誇りにすら思っている。
ちっぽけで窮屈なプライド。そんなプライドならいらないと、誰かに言ってほしいとたまに思う。でも言われても変わらないだろうなとも思う。わたしがわたしのからだに向ける視線も、さして優しいものではないから。
思い通りにならないからだにイライラして、どうにでもなれ!とわざと痛めつけるような真似をしたことも何度もあるくらいなのだ。たぶん、欠席も早退も遅刻もしないのも、それに入る。眠気に耐えるために抓った跡が、毎月のように太ももに残っている。思い通りにコントロールできないからだなんて、労わりたくなくなってしまうのだ。
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こうやって自分のからだについてグルグルと考え始めると、いつだって暗い方向に走っていってしまう。他の人のからだなら素直に心配できる。他の人のからだなら、優しい視線を向けられる。休めば良いと思うし、ぱっと見何も無くたって優先席を使えば良いと思う。うまくコントロールできない自分のからだに向ける視線が、誰のものよりもねちっこく、どす黒く、暗い。