彼氏が仕事で忙しい。余裕がなさそうだ。
私に構う余裕どころか、自分が日々生活し、体と心を整える余裕さえ。
心配で心配で、それに、寂しい。気軽に連絡ができないのが、会えないのが、ものすごく寂しい。

……と、結局我慢できなくて、彼本人に「寂しい……」と泣きついた。そうすると、彼は疲れ切って、満身創痍なのにもかかわらず、一緒に過ごしてくれるのだから……私は、本当に恵まれているし、愛されているんだなあ、幸せだなあと、ものすごく深く思う。いつもありがとう。大好き。
それでも、何だか、いつもこうだよなあということは、ちょっと落ち込みながら、やっぱりちょっと反省するのだ。

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彼にも彼の仕事がある。私との関係以外の友達関係だって、人付き合いだってある。彼自身の生活もあって、彼の家族との関係があって、彼が一人でゆっくりしたい時間、楽しみたい時間だってある。
頭では理解しているつもりなのだ。私の方だって、それは違わない。
私たちは、お互いパートナーである前に、そもそも、一人の人間であるはずだ。

一応、いつも、この寂しさと向き合おうという努力はしている……つもりだ。が、上手くいった試しは、ない気がする。一緒に暮らすようになれば、また何かが変わるのだろうか。
と、いうより、このどうしようもない寂しさの根本には、そもそも私自身が、彼と一緒に過ごさない一人の時間を、ひたすら持て余してしまう、というところに、きっとある。

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やることがない……わけでは、決してない……と思う。
本を読むのが好きだし、漫画を読むのも、アニメを見るのも好きだ。
やることを意図的に作ろうと思って、裁縫、もとい、ハンドメイドに精を出して、ポーチを縫ってみたりもしている。
こうして、文章を書いてみていることも、一つだ。

けれど、結局それらも全部、「『鬼滅の刃』、面白いね」や「今日はポーチ作ったんだ。今度プレゼントするね」「今エッセイ書いててね……」全部、彼に話したいなあ、喜んでくれるかなあ、に直結してしまっているのだから、彼と過ごさない、私が一人の時間の寂しさと向き合う目的には、結局本末転倒な気がしないでもない。

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そんなこんなで、本末転倒になりながらでも、でも、ちょっと進歩してるんじゃないかと思うこともある。
『鬼滅の刃』は、彼が面白いよ、アニメ見てみて、と薦めてくれたのが一番最初だった。今、遅ればせながらどハマりしている。数年前に大ヒットして、大流行していたのはもちろん知っていたけれど、流行りものに対して斜に構えてしまうという私の悪癖が出てしまって、アニメにも漫画にも、全く触れていなかったのだ。が、すごく面白い。今は、映画がすごく楽しみだ。もう原作を全部読んで、結末も知っているという彼に、この機会に追いつきたいところだ。

ネットで作り方を調べながら、百均で材料をちまちま揃えながら、ハンドメイドも気付いたら、何となく続いている。
こういう、いわゆる「家庭的」みたいなことには、今まであまり、積極的になったことがなかった。元々、手先が不器用だったりもするし、一人暮らしを経験したことがある訳でもなく、ようは、必要性にかられたことがないのだ。周りで、学生時代から一人暮らしをしているような女友達と比べて、もう家庭的云々というより、こういう、自分の単純な生活スキルの低さを恥ずかしいと思う気持ちも強かった。
今も決して……上手になれた、という訳ではないのだけど、でも、こういうコンプレックスは、ちょっと軽くなったように思う。

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そうして、そういう自分の胸の内を、こうして文章に書いてみるのだ。そうすると、またそれで、寂しさに押しつぶされそうなところから、ちょっと顔が上がってくる。

それで、私は今日も寂しい。
そうして、寂しい!と、もはや一人でも口に出して騒ぎながら、「さあ、どういうモノを書こうかな。彼はどんなモノを面白いと読んでくれるだろう」と、パソコンを立ち上げるのだ。