私は、二分の一成人式で、両親へ感謝の気持ちを込めた手紙を渡した。二分の一成人式とは、20歳を成人と考えたときに、その半分である十歳まで成長できたことをお祝いする学校行事である。

授業中に、手紙を書く時間が設けられ、皆思いを込めながら書き始めた。しかし、私は、感謝の気持ちはあるが、いざ文章にするのは少し難しく戸惑っていた。その時、先生に「普段、お父さんとお母さんは、何をしてくれているかな、そのありがとうの気持ちをそのまま手紙に書いてみよう」と言われた。

当たり前のように感じていた日々の生活が両親なしではできないものであると感じた。今着ている服でさえも、親が働いて稼いだお金で買ってもらい、そして洗濯してもらい、ときにはアイロンしてもらっている。生活の一つ一つに、感謝してもしきれない親のありがたみを感じた。そしてそこでようやく私も手紙を書き始めた。

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そうして、その時の「わたし」が一生懸命書いた手紙を渡す日が来た。その日は、授業参観日で、なんだかいつもと違う空気に皆の緊張が感じられた。

最初に、一ヶ月以上前から考えていた、自分の得意なことを披露し自分の成長を親に見てもらった後、十年後や将来の夢について話す。最後に、来てくれた自分の親に手紙を渡すという流れだった。

得意なことの披露では、自分の習い事のバスケやサッカーのシュート、野球の素振り、ピアノやダンス、バレエなどを発表した。私は、ピアノを披露した。まだめて半年だったため、短い曲であったが大勢の人の前での初披露とても緊張したことを覚えている。

将来の夢の発表では、幼少期は、物や食べ物、キャラクターになりたかった少年少女たちが、小学四年生になり、立派な職業を将来の夢として話していた。自分たちも親御さんも成長を感じられた瞬間であった。

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そして、ついに親に感謝の手紙を渡す時が来た。恥ずかしがりながらも、大好きな親にその時の精一杯の気持ちを伝えた。

「お母さん、お父さんへ感しゃの気持ちを伝えます。お母さんいつもおそうじや朝ごはん、夜ごはんを作ってくれてありがとう。これからは、おてつだいをしようと思います。お父さん、いつもお仕事してくれてありがとう。そのおんがえしは、今はできないけど、がんばって勉強するね。これからもどうぞよろしくおねがいします。」

日頃の感謝の想いを込めた「ありがとう」を伝えるのは初めて。恥ずかしさから親の顔をなかなか見ることができなかった。手紙を読んだあと、顔を上げてみると、嬉しそうに微笑み、「ありがとう」と言ってくれた。

その時、私の心の中はとても暖かくなった。自分の伝えた言葉でこんなに喜んでいる親の姿を見ることができて嬉しかった。私は、自分の素直な気持ちを相手に言葉にして伝えることの大切さを改めて実感した。

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今は、両親だけでなく友人や恋人にも自分の想いをストレートに表現するようにしている。そして、当たり前なことだがどんなに仲の良い関係性でも、「ありがとう」「ごめんなさい」を忘れないこと。それが私のマイルールになった出来事だった。