「なんでお土産買ってこなかったの!」すごい形相で母は叫んだ

どれだけ仲の良い人でも、お金に対する考え方や使い方は大いに異なる。環境が違うので当たり前の話ではあるのかもしれない。
フリーターで独身、今現在私も家族も健康で、何かに対する責任といえば自分の身一つ。一方で友人は結婚を機に家を買い、子供を産むことも視野に入れつつ、産休育休を取るためだけに嫌々派遣の仕事を続けている。
お金に関しては、どちらが良い悪いという正解はないと思っている。だから
「なんで正社員にならないの?アルバイトだとボーナスももらえないし」
「いつか病気になったら1人でどうやって生きていくの?」
などという心配なのかただの好奇心なのか、こういう類の質問をされることが好きではない。言われなくても、私自身どうしてかいいのかわからないから答えられないのである。
ただ一つ言えるのは、私はこの生活やお金との距離感に満足している。アルバイトとはいえ責任のある立場を任せていただいているし、好きなコーヒーに囲まれて、好きなメンバーと働く時間は、お金には変えられない。もちろんもっと時給が上がるなら大歓迎だけれど。
お金に関してのマイルールは二つ。
旅行の時はお金を気にせず好きなものを食べ、思いっきり経験すること。
大切な人との時間やお祝いには、気持ちよくお金を使うこと。
私は旅行が好きだ。お金がある程度貯まればすぐに旅行に出かける。お金よりも、知らない匂いを嗅いで、見たこともない景色を目に焼き付けて、その場所の空気を肌で感じる、その行為に価値を感じるからだ。それを逃すのは、お金を使うことよりも勿体無い。
大切な人へのお祝いにお金を使う価値観ができたのは、小学6年生の時だった。私の母は倹約家(ケチ)で、クリスマスや誕生日にプレゼントがないのは当たり前、私たち子供の服は年上の従兄弟からのお下がりばかりだった。周りの友達から当たり前のように「クリスマス何お願いした?」「誕生日はこれ買ってもらう」などという話を聞くたびに、自分の子供には絶対こんな惨めな思いをさせないと心に誓っていた。
そんな母にこっぴどく叱られたことの一つに、お土産を買ってこなかったことがある。
小学6年生の時、修学旅行で京都を訪れた。お小遣いは1人いくらまでと決められており、ケチな母でも流石にそれは持たせてくれた。少しでも母に褒められたかった私は、母が喜ぶと思いそのお小遣いをほとんど使わず、ドヤ顔で「お金、返すね」と差し出した。すると母はすごい形相で「なんでおじいちゃん達にお土産買ってこなかったの!」と叫んだのであった。
あの時私は、お土産やプレゼントはきちんとお金を出すべきだと学んだ。それからは結婚ラッシュが訪れ出産祝いが続き、お祝い費用の総額が月収を優に超えても気持ちよく出すことを心がけている。
もちろん、大好きな旅行に出かけた時のお土産も忘れずに。
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