変わらなければ愛してもらえない。そう信じていた私を変えた夫の言葉

2024年、私は結婚した。
出会ってわずか4ヵ月の短期間でのスピード婚であり、周囲はもちろんのこと私自身も驚愕と幸福とてんやわんやし、今は新居への引っ越しに向けて改めて慌ただしい日々を送っている。
夫は思ったことをその場ですぐに言葉にしてくれる人で、日々愛情表現を欠かさずにしてくれる。
付き合った当初から「かわいい」「大好き」はもちろんのこと、バリエーションも日ごと増していく一方である。
私はといえば、はじめのうちはそうした真っ直ぐな言葉を受け取ることに慣れていなくて、嬉しいのにどこかで信じられず、最初だから言ってくれるのだと信じ込んでいた。
ここ数年で発展を続けているSNSでは、友達や知り合いのみならず、どこかで人生を謳歌する誰かの日常や価値観を目の当たりにすることが当たり前になってきているように思う。
もちろん教訓や憧れになるものが多いが、あまりにも毎日当然のごとく他者の基準に触れていると、時に少し曲がった形で自分軸に変化が起きることがある。
去年までの私はまさにその一人だった。
例えば、SNSで見た誰かのように痩せなければいけない、人と接するときはもっともっと腰を低くして常に相手を立てられるようにしなければならない、と今の自分を変えなければ誰かに愛してもらえるなんてことは起きない、とそう感じていた。
しかし、夫は初めからありのままの私を対等な関係で受け入れてくれた。
恋愛を含めて誰かとの関係を構築するとき、いつも弱気で本当の自分を見せることが怖かった私は、ストレートに気持ちを伝えてくれる夫に少しずつ心を開けるようになっていった。
それでも、私は表面的な感謝の言葉しか言えなかった。いつもあいまいに笑うことしかできなかった。
このままでは嬉しいと感じていることすら伝わらず、いつか言葉以外の表現も消えていってしまう。そんな不安が強まっていった。
それはふとしたときだった。
いつものように「可愛い」と言ってくれた夫に、「ありがとう」といつも通りの言葉を返す。
そして続いて、いつも言葉にしてくれることへの感謝と、自分に自信が持てないがゆえにもらった言葉をそのまま受け取れなかったこと、今までにこんなにも愛情表現をしてくれる人と過ごしたことがなくて戸惑ってしまうこともあったことをありのままに伝えた。
すると、「そっか、教えてくれてありがとう」と、夫は笑顔で抱きしめてくれた。
安心すると同時に、これからはもらった言葉の意味のまま大切に掬える気がした。
それは、夫への信頼が確固たるものに変わった瞬間でもあった。
本心からありがとうと思ったし、この先はもらうばかりじゃなく、もっと自分も思ったことを伝えていこうと決意もした。
実際にはそんなにすぐに口に出してみることは難しかったけれど、徐々に言葉で表現できるようになってきている。はずである。
そして夫婦になった私たちは、去年よりも昨日よりも、お互いの心が近づいているように思う。
もちろんすれ違ったりぶつかってしまったりすることもある。
そういう時には傷つけあってしまうことも多い。
きっと、そんなときも私たちはなんだかんだ二人三脚で前に進んでいるのだろう。
だから次の瞬間や明日に向かって、どんな言葉で夫に伝えようか、伝わるかを想像する。
また今日も、ちょっとずつ表現を変えながら思いを届けたいな、なんて考える。
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