大学2年生、20歳、冬。最近先輩達が忙しそう。

「就職活動」

それは今年私の身にも起こる人生の一大イベント。何だか私もそわそわする。先輩が焦っているから?自分の就職活動が目前に迫っているから? 否、私の人生、漠然とした焦燥感が、背後霊のようにいつも付きまとっている。

◎          ◎

就職面接の常套句と言えば 「あなたの強みは何ですか」 がまず真っ先に思い浮かぶ人は私だけでは無いだろう。

私は今までの人生、何かを頑張ってこれただろうか。

物心ついた頃には、女の子だからと始めさせられていたピアノ。母に言われるまま何となく練習し、教室の勧めで出たコンクール、1番良い成績は地区予選金賞。本戦は当然惨敗。水泳やそろばんも習わされたが、どれも大した結果は無し。

友達がするのに憧れて中学受験、塾の先生に言われるままの中高一貫校を受け、何となく入学。

中学では皆が入るので、運動音痴だが何となくテニス部に入部。運動部が嫌になり高校では何となく弓道部に。もちろん目立った成果は残さず。

テストの成績は成績は中の下。周りが受けるから、何となく英検2級を取得(準1級は3回落ちた)。

大学受験、友達は皆学校推薦で所謂GMARCHや有名国立大へ。提出物を必要最低限しか出さず、評定の低かった私は一般入試で何となく私立女子大へ。学科はそのときハマっていた漫画から、何となく歴史学。

◎          ◎

何となくで埋め尽くされた平々凡々な人生。

祖母も呆れる父親譲りの向上心の無さと、一人娘、親族最年少という立場に甘んじ、川の流れに身を任せるように適当に生きてきた。

決して後悔している訳では無い。それなりに楽しい10代だったし、友達も少なくなかった。何となくで選んだ選択肢、習い事、部活、中学、高校、大学、どれも間違っていた訳では無いのだと思う。

でも、

「あなたの強みは何ですか」

この問いを初めて見たとき、ドキリとした。

だって、ある訳がないから。自分で何も頑張った事がないのだから。その劣等感は常に私を支配している。

「皆そんなものだよ」
「どこかには絶対就職できるから大丈夫だよ」

本当にそれで良いだろうか。これまでのように何となくでキャリアを決めるのだろうか。何となくで結婚し、何となく専業主婦になり、何となく、何となく、死ぬまで何となくだけでやっていくのだろうか。

◎          ◎

ふとインスタを見た。あの頃私と同じだった同級生は私の知らない資格を取っている。私の知らない国に留学に行っている。私の知らない偉い人と会っている。決して何となくだけでは得られない成果を得ている。

これからもそうなのだろうか。私は皆が、私の知らないところで高く高く登っていくのを、あの頃皆と過ごした山の麓から足を前に進める事無く、それでいいのだと、羨望の眼差しを向けるだけなのだろうか。

それはなんだかとても悔しいかもしれない。私だって、歩幅は狭くても、3歩進んで3日休んでしまったとしても、皆と一緒に山を登ってみたい。

あの子みたいに頂上にたどり着けなくても、5合目くらいまではなんとか進んでみたい。

これは20歳になった私の少しの変化。小さな火だ。

◎          ◎

今までの人生、決して後悔はない。でも、これからは?これからも後悔しない?

これが焦りの正体だったのではないだろうか。

単語帳は5ページしか進めた事の無い私。
ダイエットは2日しか続いた事の無い私。
夏休みの宿題は9月3日までやっていた私。

だから、直ぐに消えてしまうかもしれない火。

それでも今年は、「何となく」ではない、決意を持って何か一つ、小さな事でも成し遂げてみたい。

毎日日記をつけてみる、とか。
毎晩12時きっかりに寝る、とか。

大層な事を言ってはみたけれど、明日の夜2時まで起きていたら、そのときはどうか笑って欲しい。