今思うと、中学生らしいありふれた恋愛だった。中学1年生で、隣の席になった男子に恋をした。

席替えをしてもまた隣の席になったときは、運命だと思った。毎日ドキドキしていた。

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そんなある日、彼が告白されたという情報が入ってきた。頭が真っ白になった。その後、焦った。彼が他の誰かのものになってしまったらどうしよう、と。そこで私は人生で初めての告白をすることを決意したのだった。

とはいえストレートに「好き」と言うのは無理だった。だから「好きな人を教える」という会話の流れから、彼の名を言おうと決めた。彼と掃除場所が同じだったので、掃除の時間に決行することにした。

作戦通り会話の流れはできた。だがどうしても、彼の名が言えない。1文字目が喉に引っかかって出てこない。そこでついには、出席番号を言うことになった、

「7番……」

彼の顔なんて見れず、俯いて、消え入りそうな声を発した。

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声が出た後すぐに、その場にいられなくなり、廊下へ飛び出した。箒を握りしめ、教室の外の壁に背中をつけ、息を吸って吐くことしかできなかった。心臓が口から出そうなほどバクバクと脈打っていた。

掃除の終わりのチャイムが鳴ると、教室のドアから手が出てきた。その手はOKサインを作っていた。

かくして、彼との交際が始まった。

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だが、中学生の恋愛だった。手を繋ぐこともなく、デートすることもなかった。恥ずかしくて何もできなかった。彼の気持ちもわからず、ずっと片思いのような気持ちだった。

そんな状態で中学卒業を控えた3年生の2月、私は改めて彼に好きだという気持ちを伝えることにした。バレンタインチョコを渡して、卒業しても交際を続けてほしいと告げた。もう「7番」しか言えない私ではなかった。

彼の回答はノーだった。高校で部活も忙しくなるし、デートとかできなくて申し訳ないから、という理由だった。

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そこから私たちは友達に戻った。彼を含む5人組で仲が良かったので、私たちは恋人である前に友達だった。高校生活はそれぞれ忙しく、なかなか5人で会うことはできなかったが、それでも年に1回は集まっていた。

彼と別れた直後は、すぐに割り切ることはできなかったが、彼への未練は時間と共に薄れていき、いつしか本当に何でも話せる、かけがえのない存在になっていた。グループの他の4人と同様に、親友だった。

そこまで親友と呼べる存在になり、私も彼も新しい恋愛を始めたとき、やっと聞くことができた。

「あの時、私のこと好きだった?」

私は社会人、彼は大学生になっていた。居酒屋で飲んでいるときのことだった。

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ずっとずっと気になっていた。付き合っているときも、ずっと片思いのような気持ち。交際に承諾されたものの、好きという言葉は一度も聞かなかった。

少しでも恋愛感情がある状態で聞いたら、期待してしまう。それはしたくなかった。終わった恋だからだ。でも恋愛感情がなくなってからも、疑問としては残り続けた。

だからお互い大人になった今、次の恋愛に進んだ今なら、過去のこととして聞けると思った。

「今思うと恋愛とは少し違ったかもしれないけど、でも好きだったよ」

その言葉で、中学生の私が救われた。

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お酒のノリっぽく言ったものの、あくまで真剣に答えてくれた。そんなところが好きだったな、と思い出した。

彼はずっと、最高の親友だ。