休職中の私たちは、立ち止まっているようで確実に前に進んでいる

休職とは、前向きな行動だと思う。
その時は突然訪れる。
「もう無理……」
私の心の声はそう呟いた。
最初は見逃そうとして無理矢理職場に行って仕事をしようとしたこともあったが、身体は正直で思考も身体も思うように動かない。
私の全てが限界だった。
悔しかった。
1回目の休職で感じたことは、休職中に仕事をしてはいけないということ。
当たり前だ。
教員だった社会人1年目に病気休暇を使い切った私は、2年目から休職になった。
病休になって半年で少しずつ外に出ることができるようになった頃、復職に向けて職場に出る日を週に1、2日設けていった。
職場に行って子どもたちの声が聞こえるたびに苦しくなった。
雑用をやっとこなす私を見て嫌味を言う校長。
私が出勤しても一切声をかけてこない学年主任。
復帰させる気無いだろ、と言いたくなった。
うつ病になっても周りの人の私に対する関わり方や印象は変わらない。
初めての休職は4ヶ月くらいあったが、ほとんど休めていなかったと思う。
仕事や職場の人のことに対するネガティブな考えが止まらなかった。
それでも自分の気持ちを楽にするために、海に行ったり、桜を見に行ったり、友達と話したりして好きなことをして過ごしていた。
運転や友達との会話も疲れてしまうことがあり、次の日は生活サイクルがずれるほど寝てしまうこともあったが、好きなだけ寝てとにかく自分に無理をかけないようにして過ごした。
それ自体は良かったと思う。
でも仕事を順調に続けている大学の友人らと比べてしまって、虚しくなることもあった。
これからどうしたいのか分からない。
いつ病状が軽くなるのかも分からない。
先が見えなかった。
母にもなかなか相談できなかった。
お金をかけて行きたい大学に入って教員免許を取ったのに、全然楽にさせてあげられていないという負い目があったからだ。
そんな時母から、「もう頑張らなくていいから、うちに戻ってきなさい」と言われてとても楽になったし、目の前の霧が少し晴れたような気分になった。
社会人2年目の夏、人生をリセットした。
現在の職場に入ってからも1ヶ月休職している。
燃え尽き症候群のようになって何もやる気が出ず、朝の準備ができずお風呂に入れなくなって生活に支障が出てきた。
そのような状態から1ヶ月で初めての復職を果たすことができた理由は、「戻りたい」という強い気持ちを持つことができた職場環境の良さだと思っている。
仕事に穴を空けて迷惑をかけている事が気になって謝罪したことがあり、そのたびに同僚から「気にしないでゆっくり休んでね。こっちのことは任せて!」と声をかけてもらった。
私はその言葉に本当に救われた。
しっかり休んで元気になって恩返ししたいと心から思った。
だから、仕事のことはあえて考えずに、自分の気持ちが楽になることや元気になること、自分の機嫌が良くなることを何でもやった。
髪を切ったり、カラオケに行ったり、友達と本場のカレーを食べに行ったり、好きなだけカフェ開拓したりした。
どこかで出会った「自分で自分を幸せにする」という言葉を胸に、幸せを感じることを何でもやった。
お金はかかるけど、復職するためにはどれも必要な投資だったと思うようにしている。
気分は2週間くらいでかなり回復した。
復帰した後も休むことはあったが、それを見越して仕事を割り振っていただいていたので無理なくスムーズに仕事ができた。
復職って実現できるんだと思った。
私の大学の同期で中学校の講師をしている友人が、病休から復帰した正職の同僚教員に対して、「1日1時間しか授業しないって……。給料公務員だからうちよりもらってるよね?」と投稿しているのを見た。
やっぱり「病休ってただ好きなだけ寝て仕事しないで好きなことして過ごしているのに給料ちゃんともらっててずるい」と思われがちなようだ。
仕事を戦いだと思っている人にとっては、休職つまり職場にいないことは逃げているということのように思われるかもしれない。
しかし休職を2回経験している私からすると、本当はみんなと同じように働きたいのにそれができなくて苦しくて悔しくて自分とずっと戦い続けている感覚なのだ。
だから理由は何であれ仕事ができなくなってしまった人が、頑張りすぎてしまった人が、また仕事ができるようになるために努力している姿って本当に尊い。
もう頑張らなくていいです。
十分頑張りました。
長い人生を前に進むためには、休憩したり寄り道したり、後ろを振り返って方向を確認してもいい。
周りの景色を無視して走り続けるのも良いけど、休んだからこそ見れる景色があると思う。
休職中の私たちは立ち止まっているようで確実に進んでいるのです。
もっと堂々と休みやすい社会になったらいいなと思う。
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