「黒のランドセルがいい!かっこいいから!」

5歳の春手前のこと。
私は小学校入学準備のため両親とショッピングモールに来ていた。
ズラッと色とりどりのランドセルが並び、好きな色を選びなさいと言われたから言っただけなのに。

「学校でいじめられるからダメ。女の子なんだから絶対赤かピンク!」

母にそう言われてしまい、幼い私にはあまり意味が分からずあまりごねない私が珍しくごねたのを覚えている。
結局真っ赤な一番スタンダードなランドセルを購入してもらった。

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実際入学してみると女子の8割は赤、そのほかに水色やピンクやオレンジなどの明るい色。
男子は9割5分黒、それ以外は青や茶色だった。
6年間あまり納得いかないままそれを使い続けて、爪でいたるところに引っかき傷で模様を作っていた。

中学に上がると制服になった。
近所のお姉さんからもらったお下がりのセーラー服。
スカートはなんだかすかすかしていて落ち着かないし、何より足がはっきりと見えるのがすごく嫌だった。
冬はとんでもなく寒いし。

理科の先生に異議申し立てをしたこともある。
なぜ女子はスカートをはかなければいけないのかと。
すると先生は別に校則にはっていないしいいんじゃない?と答えた。
私は次の日からジャージで登下校することにした。
結局怒られて仕方なく制服で、スカートで通うことになった。

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女の子だから持ち物はピンクや赤の可愛い色で、女の子だからスカートで。
周りの目もあるんだからという押し付けは成長期の私には辛かった。

反動もあったが当時の私服は必ずパンツスタイルで全身真っ黒が好きだった。

高校時代の制服もピンクや赤のリボンではなく紺のネクタイを好んでつけていた。
〇〇高校の誰とか君が男の子なのに女の子の格好をしていて歩いていたと、わざわざ電話をかけてきた友人とは速攻で縁を切った。
かっこいいし素敵じゃない。好きな格好して堂々と歩いているんだから。
それがなんなんだ。迷惑を被ったわけでもないでしょう。ただ歩いていただけでしょう?

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だけど私は18歳を過ぎたあたりからスカートやピンクなどの明るい色。
つまり、周り曰く女の子の服を着ることが好きになった。

母や親戚たちは、彼氏?とか、やっと女の子らしくなって安心したとか言ってきたけど1ミリもわかっていない。
ただ私の好みが変わったのだ。別に誰かのためでも色気づいたわけでもない。

なぜこうも型にはめようとするのだろう。
まるで周りの言う女の子らしさから外れた私は存在すら認められていないみたいじゃないか。

そこまで大げさに言っていないことはわかっていた。
だけど私は自分の好きな服を着て好きな髪形で好きなメイクでほめられたいだけなのに。

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私とピンクの距離は全く縮まらない。
私が好きでピンクを着たって持ったって縮まらない。

幼少期に大人に褒められたりかわいがられた経験が少ないとどうしてもそこがコンプレックスになりどこかでゆがみが出てしまう。
記憶にはなくて幼少期に見聞きしたことは、大人になってから大きな影響を与えることもある。

ただ校則や社会のある程度のルールは守るべきだ。
学校から離れて社会に出たときに役に立つことがあるからだ。

だけど自分の自由な時間は小さいころからぜひたくさん褒められてほしい。
今を生きるすべての子供たちに対しても大人にも。強くそう思う。

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それは〇〇じゃないからダメ、絶対〇〇などの言い切りで終わらせるのではなく。
素敵だと思うけどこういう場合にはこうするんだよと。

強制ではなく教える・諭す形だといいなと。

そもそもピンクとの距離という言葉が出ないようになるほど、身に着けるものや色が自由に選択できるような世界になりますように。