「ピンクは好きですか?」

そう聞かれたら迷わず「はい」と答える。ネオンピンクやマゼンタピンクのような、鮮やかではっきりしたピンクと黒色との色合わせが大好きだ。

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子どもの頃は「ピンクが好き」とは言えなかった。本当にピンク色が嫌いだったわけではない。女児が「ピンクが好き」と言うと、周りの大人たちが宛てがうのは決まって淡いピンクでリボンやハートの柄がデザインされたものばかり。ビビッドカラーでロックなデザインなど皆無に等しかった。強いて言えばサンリオのクロミちゃんが時々掠ってくるくらいである。

自分が好きなピンクが「ピンクが好き」の一般的なイメージとは大きくかけ離れていることを、子どもながらに感じ取っていた。「ピンク」の一言でテイストまで決めつけられることに失望した私はいつしか、好きな色の1つにピンクを挙げなくなっていた。

ピンクの中でもこんなピンクが好きなんだ、そう補足すれば良かったじゃないかと言われればその通りである。しかし、まだ幼かった私はそこまでの語彙も持ち合わせておらず、何よりそれ以上に「ピンクが好き」が「フェミニンなテイストが好き」と解釈される風潮に反感を抱いていたのだ。

そうして、いつしかピンクが好きだったことすら忘れていった。

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再びピンクが好きと公言するようになったのは、大人になってからのことだ。

2019年に発売された「ポケットモンスター ソード・シールド」。そのゲーム内に、私好みのピンクを纏ったキャラクターが登場したのだ。モノトーンにビビッドピンクの衣装、パンクロック系のキャラクターデザインの男性である。メインカラーをピンクにしながらも甘さとは正反対のテイストはどストライクだった。そして、同時にはたと頭をよぎった。

そういえば、昔からこういうピンク好きだったじゃん。

大人になった今なら、自分の「好き」を表現するだけの言葉も、好きなものを好きという勇気も手にしている。みんなの思う「ピンクが好き」じゃないからなんだ。ピンクだって、もっと多様性があるはずだ。

前述した彼はゲームのストーリーにおいて、競技化、エンタメ化したポケモンバトルのあり方に与せず、独自のスタイルを貫いていく反骨精神に溢れたキャラクターである。そのぶれのない芯の強さを、ピンクが象徴しているような気がした。

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2月の最終水曜日は「ピンクシャツデー」である。ピンク色の服や小物をシンボルに、いじめや差別に反対する意思表示をする日だ。この運動はカナダの高校で起こった実話が元になっている。ピンクのシャツを着て登校した男子生徒が、上級生に「女みたいだ」「ゲイなのか」といじめられた。その様子を見ていた他の生徒がピンクの服を大量に購入して配り、さらに「みんなでピンクの服を着て登校しよう」とSNSで呼びかけたところ、多くの生徒がピンク色の服を着て登校し、いじめが解決したという話である。

このエピソードから、いじめや差別を許さないという強い意思の象徴がピンクなのだ。

見て見ぬ振りをせずにピンクの服を配った2人の勇気と行動力もさることながら、学校に堂々と好きな服を着ていった男子生徒にもまた、自分に正直に生きる強さがあった。

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私にとってピンクとは、周りに流されずに自分らしさや信念を貫く、そんな逞しさを表す色だ。

おばあちゃんになっても、ド派手なピンクを堂々と着ていたい。