「あなたの人生のターニングポイントはどこですか?」という質問があるとする。

結婚や出産、転職など、人にはそれぞれ人生のターニングポイントがあるだろう。

26歳、この春から社会人4年目の私ならこの問いにこう答える。

「私の人生のターニングポイントは社会人1年目だった3年前の3月に1カ月間休職をした時期です」と。

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希望に溢れた出来事ではない。正直にいうと、二度と経験をしたくない。なぜなら、私の人生のどん底期だったからだ。
もしも、記憶を消せる消しゴムがあれば、すぐに手に入れて記憶を消してしまいたいと思うほどである。

しかし、どん底期に経験した休職こそ「たくさん休むことは悪ではない。未来の自分が行動できるようにするための必要な時間」だと気づかせてくれたのだ。

私は当時、建設会社で不動産事務の仕事をしていた。仕事はやりがいを感じていたが、昔ながらの会社気質、セクハラとパワハラ発言を平気でする同僚など、私の人生至上最悪な環境だった。
最悪な環境は私の心と体を蝕んでいく。性格はきつくなり、今までなかった吐き気や胸が痛くなるなどの症状がでていた。
心と体が限界だったが、「辞めたい」という感情を押し殺し、我慢をして働いた。当時はコロナ渦であったため、辞めたら働き口が見つからないと思ったからだ。

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しかし、入社1年目の2月下旬にどん底へ落とされる瞬間がやってくる。
人事部長から呼び出され、こう言われた。「コロナでこれ以上雇えないから自分から退職してくれないか?」と。言い放たれた言葉は私の心に突き刺さり、頭が真っ白になっていく。
話が終わった後、私はすぐに早退した。こんな場所にいたくなかったからだ。家に帰ると我慢してきた「つらい」という感情が溢れて、たくさん涙を流した。「どうして自分がこんなつらい思いをしないといけないのか」と。

次の日の朝、起きると涙が止まらなかった。昨日、たくさん泣いたのに涙は枯れていない。私は会社を休み、かかりつけ医である内科に向かった。
精神的な症状は精神科を思い浮かべるだろう。しかし、当時の私は精神科を受診した経験がなかったのと、赤ちゃんの頃から知っている内科の先生に相談したかったのだ。
私は先生に今の会社であったこと、吐き気や胸あたりの痛みがあることを話した。先生は私の話を聞いた後、優しい眼差しでこう言った。
「つらい思いをしたね。今はしっかり休みなさい。心と体を休ませることで、またがんばれるんだから」と。

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先生はすぐに診断書を書いて、休職できる手続きをしてくれた。私は診断書を会社に提出し、3月から1か月間休職した。
休職中は仕事のことや未来のことを考えず、ゆっくり休むことを心掛けた。大好きなアニメ映画を見たりするなど、自分の趣味を楽しんだ。大好きなことをすることで、性格は元に戻り、体に起きていた症状は改善された。それと同時に、職場環境がいかに自分に悪影響を与えていたのかに気づいたのだ。

休職中に1つ始めたことがある。それは自分の思いをノートに書くこと。自分の心の声を無視して無理してしまったからこそ、自分の思いを大切にしたいと感じたからだ。

自分の思いを書く習慣をつけたことで気づいたことがある。それは、「今の職場を退職する。自分を守るためにも新しい環境に移動したい」という思いだ。
その後、会社を3月末で退職することを決めた。悪い環境は自分をダメにすると休職中に学んだからだ。退職後の転職活動は難航をしたが、たくさん休んだことで心折れずに転職活動に専念できた。

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その後、無事に転職先が決まり、現在、尊敬できる上司の下で働いている。
3年前は「この後の人生をどうしよう」と悲観していたが、休職エピソードをエッセイとして書けるくらい、今は人生を楽しんでいる。もし、当時の私が知ったら驚くだろう。

現在、休職を考えている人たちに私はいいたい。

「休みたいと思ったら、すぐに休んでほしい。休むことは、未来の自分が動けるようになるための大切な時間なのだから」。