批判され、敬遠される女性部長。それでも彼女が役職を全うする理由

女性の部長が必要だったから。私の会社にはそんな風に言われて敬遠される部長がいる。いろんな場所でその話を聞くけどそのほとんどが、役職に見合ったお仕事が出来ていないとか責任逃れをしているという批判の言葉だ。でも、私が入社する前から部長だったし、そんな噂がある中でも、役職が落ちる訳でもないその、会社唯一の女性の部長には、その方なりとやり方や信念があった。
私が、会社で唯一女性として部長職に就いているその方を初めて会話をしたのは、新入社員研修の最終日だったと思う。いつもは、お客様先だったり研修だったりで忙しくしている各部長さんたちが集まり、研修後にどこに配属されるのかを発表するその場で私は、その女性の部長さんに自分の不安だったりお仕事に対する難しさの相談をしていた。もちろん、私の漠然とした不安に対する答えを見つけることはできないし、話したところで解消するわけではない。でも、親身に話を聞いてくれて私の不安を同じように感じてくれたその先輩に私は親近感を持っていたし、感謝もしていた。
しかし、配属先でいろんな人の話を聞くたびに大半の人が、その女性の部長に対して好意的ではない感情を抱いている事を知った。話を聞くたびに、実際に一緒にお仕事をしてうまくいかなかったことや、会議での応答の内容が微妙だったなど、内容は多岐にわたっていたが、誰にもあるようなミスや思い違いなど、致命的にお仕事に影響を与えるようなものではないと思っていた。
直接一緒にお仕事をする機会はまだないが、相談ごとや飲み会など様々な場面で、その先輩を目にするし、悩み事を聞いてもらうことだってある。そのたびにちゃんと話を聞いてその人なりの回答を話してくれる。なんとなく聞いて、お酒の力で適当な回答をするような他の上司に比べればずっと優しくて便りになる先輩なのに、そんな風に言われてしまう。
そのことについて尋ねたことがある。その時、先輩は、ママさん部長としての任命だったこと、家庭との優先順位からお仕事優先にはできないことを話してくれた。いろんなお話を聞けたが、中でも一番うれしかったのは、少しでも制度を良くしようと今の立場でお仕事をしてるという信念と、そうやって力を入れているけど無理に後につかなくても大丈夫と言ってもらえたことだった。
きっと、女性にも地位を与えようと動き出した社会の中で、先輩には先輩の戦いや目標があるのだと思う。そして、その目標実現を後に続く自分より若い人たちのためと押しつけるのではなく、自分のこととして捉えていたことに私はその先輩の強さを感じた。後に続く人や自分より優秀な人に道を譲ることだってできる。でも辛い中でもその選択肢を選ばないことに、社会の動きや流行とは違う場所に、先輩には先輩の実現したい目標があるのだと感じた。
それは、女だからと始まったことかもしれない。先輩にはその流れに対して、女のくせに、女だったからとならないような結果を求める意志があるように思う。そして、これから先に私がどんな道を選ぶとしてもその意志だけは、私もいつか後輩に教えてあげたい。
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