自問自答しながら進む新しい人生。自由って、こんなに怖くて、嬉しい

朝、湯気の立つ味噌汁をよそいながら、ふと考える。「あの日の私は、どうしてあんなにも怖がっていたのだろう」と。
結婚生活に終止符を打つと決めたあの日から、私の世界はゆっくりと、しかし確実に回りはじめた。離婚という言葉は、ずっと遠くの世界のことのように思っていた。まさか自分が選ぶ日が来るなんて、何年も前の私に教えても、きっと耳を塞いでいただろう。
だけど、もう限界だった。
「自分の人生を、自分の足で歩いていい」
その声が心のどこかでずっと鳴っていたのに、聞こえないふりをしていたし、その思いは間違っていると感じていたのだ。
家庭の中で、“良い妻”であり、“良い母”であることに必死だった。逃げ出すようで、負けを認めてしまうようで、ここにいることが正解と信じて疑わなかった。
けれど、いつしか“良い自分”を演じることに疲れ果て、本当の私はどこかに隠れてしまっていた。
離婚の決意は、痛みと同時に自由をもたらした。
けれど、自由には責任がついてくる。経済的不安、老後の心配、そして何より、周囲の視線。
「離婚したの?」「これから、どうするの?」
そんな無邪気な一言が、何度も胸を刺した。
でも、私は知っている。
私たちの強いところは、「痛みのあとに、やさしさが芽を出すこと」。
誰かの言葉で傷ついたとき、自分の弱さを認めたとき、私たちは静かに立ち上がる。
それは大声ではなく、日常のなかの小さな決意であり、ささやかな行動だ。
知人から「元気?」というメッセージが届く。それだけで、たったそれだけのことで、その日一日が救われたような気がする。「大丈夫だよ」と言われたような、そんな気持ち。
私も、そんな風に誰かを包めるようになりたい。自分の傷を見つめ、それでも前を向いた経験が、誰かの背中をそっと押せる日がくると信じたい。
いま私は、新しい人生を形にしようともがいている。
文章を書くこと、声を届けること、自分の思いを誰かと共有すること。
それは怖くて立ち止まることもあるけど、私は何をしたいんだろう?と自問自答しながら進んでいくのだ。一人になった寂しさがないとは言えないが、気付けば友人をはじめ、私の周りには気使ってくれる人達がいる。
今は夢に向けて試行錯誤することが、楽しくてそして何より、生きている実感に満ちている。
「離婚したことを、恥ずかしいと思わないで」
最近、ようやくそう言えるようになった。
それは、“離婚をマイナスと捉えていた私“への言葉でもあり、今どこかで悩んでいる、同じような境遇の方へのメッセージでもある。
私たちの強さは、決して派手ではない。
だけど、諦めなかったという事実のなかに、確かに存在している。
だから今日も私は、自分の手でご飯をつくり、自分の言葉で道を照らす。
不安が消える日はもしかしたら、こないかもしれない。
だけど、それでも歩き続ける私たちを、誇りに思う。
「私たちの強いとこは、何があっても、自分を信じようとする力」
その言葉を胸に、私は今日も私を生きていく。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。