そうだ、ベーグルを焼こう!香ばしい匂いが漂ったときに気付いた朝日

私は朝ごはんが好きだ。
文字通り、「朝に食べるごはん」としての朝ごはんも好きだし、一般的に朝ごはんとして食べられているメニュー全般も好きだ。
オムレツ、サンドイッチ、目玉焼き、焼き鮭、卵かけご飯、パンケーキ…これらのメニューを夜に食べることもあるくらいだ。
某ハンバーガー店のメニューも、朝限定のものが1番のお気に入り。1日中朝メニューのみを出す店舗があってもいいのになぁと思う。
その店舗は、朝に行っても夜に行っても「おはようございます!」という爽やかな挨拶で迎えてくれて、ソーセージエッグマフィンやハッシュポテトの朝食を提供してくれるのだ。
いつもそんなことばかりを空想しているくらい、私は朝ごはんが大好きで食いしん坊なのである。
ある夜、なんとなく目が冴えてしまい、だらだらとスマホを眺めながら過ごしていた。
つけっぱなしにしていたテレビは深夜番組を放送していて、時計を確認するともう深夜3時を過ぎていた。
やってしまったなぁ、と思う。深夜2時まではまだ「夜」な気がするのだが、3時を越えてしまうと「朝」が近くなるような気がする。
最近、昼夜逆転気味でまだ眠れそうにない。このまま寝室に向かったとして、寝つくのは1〜2時間ほどかかるだろう。そうなると、また昼過ぎに起きることになり、昼夜逆転現象は加速していってしまう。
私はどちらかというと夜更かしなタイプであるため、こうした昼夜逆転気味になってしまうことはたまにある。そして、それを解消するために有効な手段も分かっている。それは、どこかで徹夜して朝まで起き続けることである。
ここまで起きてしまったのだから、やるしかない。私は、徹夜を決行することにした。
しかし、ただ徹夜をするだけでは面白くない。何かやることがないと、寝落ちしてしまう可能性もある。何かちょうどいい暇つぶしはないか、スマホを眺めながら考えていた。スマホをスクロールする指が漫画アプリの上で止まった時、私は思い立った。
そうだ、ベーグルを焼こう!
私には朝食を巡る女性を描いたお気に入りの漫画があり、そこに手作りのベーグルを焼く回があったことを思い出したのである。いつか焼いてみたいと思い、ベーキングパウダーや強力粉なども買い込んだまま開封されることなく置いてあった記憶がある。今こそ、絶好のベーグルチャンスである。
レシピを検索し、早速準備を始める。ベーグル作りは案外作業工程が少なく、これなら私でも作れそうだなと安堵した。
おおまかな流れとしては、材料を混ぜてこねる、何等分かにして生地を休ませる、リング状に成形して発酵させる、一度茹でる、オーブンで焼く、という5工程だ。普段からお菓子作りをすることなども多く、料理も好きな食いしん坊のため、難なく生地を作り上げていくことができた。
茹で終わった生地を、クッキングシートを敷いた鉄板に並べていく。タイミングよくオーブンの予熱が完了したので、鉄板をその中に納めてタイマーを13分に合わせる。ブーン…という音を立てるオーブンの窓から、ベーグルがオレンジ色の灯りに照らされているのを少し見守る。無事に焼かれていくベーグルたちの様子に満足した私は、コーヒーでも淹れて一息つくことにした。
コーヒー豆をミルで挽いていると、オーブンから香ばしい匂いが漂ってきた。レースカーテン越しに柔らかい光が差し、既に朝が来ていたことに気がついた。
そんな夜があったことも、私はすっかり忘れてしまっていた。
昨夜、なんとなく目が冴えてしまい、だらだらとスマホを眺めながら過ごしていた。
スマホに搭載されたAIが、おすすめの写真を表示してくる。
そこには、こんがりと焼けた美味しそうなベーグルが映し出されていた。
あの夜、暇つぶしに無心でベーグルを作ったこと、焼き上がったベーグルを家族全員で食べたこと、結局お腹がいっぱいになって寝てしまったことを思い出し、少し笑った。
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