ずっと優等生だった。必要以上に夜更かしもしないし、アルコールもジャンクフードもほとんど食べない。でも、別にそれを望んだわけではなく、体調も勉強やお仕事も、そっちの方が効率が良かっただけだ。

わざわざ、ダメなことをしなくても、私には楽しかったし、ストレスはなかった。でも、本当は少しだけ憧れがあった。早く寝た方がよい事は分かってても、眠りたくない夜もある。一日を頑張って眠りにつく私の夜はアッという間に過ぎたけど、大学時代の友達とファミレスで過ごした長くて朝が待ち遠しいあの夜を私はきっと忘れない。

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きっかけは、慣れないお仕事で失敗したとか、思い出せないくらい些細なことだったと思う。今では当たり前の小さなミスもそのレベルが分からない最初のころはその一つ一つがとにかく怖かった。

そのたびに落ち込んだし、周囲の顔色をうかがう日々だった。そんな中で、大学で同じクラスをとっていた友達が同じ駅で通勤していることが分かり、お仕事の帰りにご飯に行く約束をした。いつも見ている町も金曜日の夜ともなれば、明日からの休日の心を躍らせて少しだけ浮足だった人であふれていたし、まだまだ、お仕事も場所にも慣れていない私たちにとって、それは初めての小さな冒険だった。

駅に集合してお互いのお仕事について話しながらよさそうなお店でご飯を食べて、その後どうするかを考えていた時にどちらかが、24時間営業のファミレスならずっとおしゃべりできるねって話したことがきっかけだった。最初はただの冗談だったし、あまり深く考えずに、でも24時間営業のファミレスに入っただけだった。飽きれば解散すればいいし、くらいのノリだったと思う。

たかが2、3か月働いただけの私たちには、とにかく誰かに聞いてもらいたい不安だらけということで話は尽きず、気が付けば1時を過ぎていて終電がなくなっていた。お互いにそのことに気が付いてからは仕方ないねと笑いながら、お仕事のこと、趣味、恋愛、尽きない話題でいろんなことを話した。

それでも、1度に話せることには限界があるみたいで、4時頃にはどこにも行けないまま、時間を持て余していた。体力的には辛くないけど退屈でとにかく早く電車が動かないかなとそればかり話していた。そして、電車が動き出した時間にほとんど始発の電車でそれぞれの帰路についた。

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私にはこの夜だけの経験だが、夜通しのおしゃべりなんて別に珍しくない人もきっといると思う。でも、私にとってこの夜に一緒にいた友人は、ちょっとだけ良くない経験を共有した特別な友人だ。

疲れていたのか、単に人が少なかったからなのか、向かい合うホームで手を振ったのだって、あの時だけだ。そして、あんなに待ち遠しく、けれども色のない朝も貴重だったと思う。希望も絶望も、なんとなく朝から始まると感じている。楽しみで眠れない夜も、緊張で迎えたくない朝もある。でも、なんとなく過ぎた夜の先に迎えた、待ち遠しい朝は、感情のない心地よい疲れだけを届けてくれた。