最近、心から嬉しいことがあった。
それは、妊活を続けていた同期が、ついに妊娠したことだ。

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彼女は、私が妊娠していたとき、いつもそばで支えてくれた。
妊娠中の職場は、思っていたよりずっと生きづらかった。
私は部署が変わったばかりの中で妊娠が分かり、申し訳なさでいっぱいだった。
職場の人はみんな優しかったけれど、まだそれほどお互いを知らなかったので、頼りにするのも気が引けた。
色々な負担を押しつけていることから、心が潰れそうな日もあった。

そんな中、彼女は異動前から仲が良かったので、周囲との関係を取り持ってくれた。
よく声を掛けてくれたし、雨の日や寒い日は車を出して、最寄り駅の近くまで送り届けてくれた。

疲れた私に、さりげなく小さなプレゼントを渡してくれた。
「頑張ってるね」「無理しないでね」
その気持ちごと受け取るたびに、何度も涙が出そうになった。

だけど、彼女が本当にすごいのはそこだけじゃない。
彼女は、妊活中だったのだ。
私が妊娠して、喜ぶ気持ちと同時に、きっと苦しい気持ちも抱えていたはず。

それでも、顔にも態度にも出さず、ずっと私の盾になって職場から守ってくれた。
心からの優しさと、計り知れない強さだった。

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私も妊活を2年半ほどしていたから、そのすごさは良くわかる。
妊活は頑張ったところで努力が報われるわけでもない世界。周りが妊娠・出産と次のステージに進む中、段々妬ましさが強くなって心の余裕がなくなっていく人も多い。
「SNSでもクリニックに子供を連れてきてよいか」が度々議論の的になっているくらいだ。
それでも、彼女は心から私の味方をしてくれた。本当にかけがえのない人だ。

そんな彼女が、このたび妊娠した。
報告を受けた瞬間、涙がにじんで、声にならなかった。

「おめでとう」
感動を表すいい表現が見つからなくて、何度も何度も繰り返した。

そして彼女は、そっと言った。
「今度は、私があなたに頼らせてほしいな」

胸がぎゅっと熱くなった。
嬉しくて、愛おしくて、何より誇らしかった。
あのとき、彼女に助けられた私。
今度は、私が助ける番だなと、迷いなく思った。

だからすぐに動いた。
この春に激務職場に異動した彼女が無理をしないように、上司に掛け合った。
「彼女にもしもの事がないように、どうか業務量を調整してあげてください」と。

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今度は、私が盾になる番だと思う。
育休中で現場には立てないけれど、色んな人と逐一連絡を取り合って、守ってみせる。

巡り巡る優しさ。
それを私は、確かに受け取った。
だから今、全力で返したいと思う。

あの日守られた私が、今誰かを守る。
そんな当たり前のことが、こんなにも誇らしくて、嬉しい。

優しさは、きっと巡りながら、少しずつ世界をあたためていくよね。