会社との距離感。
それは、誰もが測り方を教わらず人知れず身につけるもの。
もちろん、職場でどんな話はして良くてこれは言ってはならないなどを学校でも習うことはないし家族も教えてくれない。
人によって職場と自分の距離感は違うことだろう。

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私は、職場に出勤している24歳の4年目看護師の自分とプライベートの自分をわりと区別している方だと思う。自宅では誰かの愚痴も自分の泣き言もたくさん言う私だが職場では笑顔で悪口は言わず真面目に働いている。
女ばかりの職場は噂と愚痴と仲間意識でできている。
今の職場に入職したての頃は、「どこに住んでいるの?」「1人暮らし?」「彼氏はいるの?」「持病はあるの?」などたくさん聞かれた。私は皆にとって未知なる情報の塊であった。新鮮な話題の元である私に興味を示し、あらゆる情報を得ようと数カ月は質問攻めにあった。

同じく、他部署に配属された新人看護師たちも噂の餌食となり各階で色々な話が聞かれた4月5月。春から夏へ梅雨を迎えても、その場にいてもいなくても、その話が擦り切れてやがて消えるまでメンバーを変え時間を変え場面を変えあらゆる場で話題にあがり消費されていった。

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それを見て、体験して自分がこれから長く務めていく職場を理解した私は緩やかに話し手から聞き手へシフトチェンジしていった。

これは、私の仕事人生においてある意味大きな岐路だったといえるだろう。

ある子は、自分の悩みや生活を積極的に職場で話しアドバイスをもらったりしていた。しかし、違う階で勤務していた私にまで話がまわるくらい大っぴらに広がっていた。話は、人から人へ伝わり尾びれ背びれがつきホント1割ウソ9割くらいで聞いたほうがまだ信じられる。そんな内容にまで、本人から私が聞いた話よりも人づての噂話には脚色がされて伝わってきた。
またある子はプライベートの話を一切しないミステリアス、付き合いが悪いだなんだと言われ違う意味で噂になっていた。

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これを踏まえて今の私が見つけたベストな答えを皆さんに伝えたい。
まず、絶対に誰かの悪口を言わずそれに同調しないこと。そして、笑顔で嫌がらず話を聞き自分語りをせずにとにかく聞き手に徹する。
これである。

簡単に見えて実は難しく、悪口を言うことで結束が深まり仲良くなったり仲間意識を持ってもらえることがある。
「◯◯さんって仕事ができないくせに態度はでかいのよね」など言われても決して「そうですよね!」なんて返してはならない。この「そうですよね!」に尾ひれがついていずれどこかで◯◯さんが再び話題に上がった時に自分がそう言っていたことになるからだ。そうですよね=同意=言ったも同じなのだろう。

女社会でのこの仕組みにいち早く気がつくことができた私はいわゆる「オツボネ様」とも良好な関係が築けている。

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これを4年やっていたら、考えずとも、否定せず肯定せず相手の話をよく聞き適度な相づちと表情を読み言葉を選ぶという職場でしか使えないようなスキルが身についた(とても自分が汚れてしまったように感じるがこれが私の職場での処世術なのだ)。
本当は、たまには温泉に行ったなど楽しかった旅行の話や金額はいくらでNISAを始めるか悩んでいるなどお金に関するデリケートな自分語りを誰かにしたい。
しかし、これを職場のたった1人に話すことでどこまで自分の話が脚色されて面白おかしく広がってゆくのだろう?と考えてしまうと本当に信頼できる人にしか話せない。無駄口を叩くことは自分の首を締めることになる。そんな思考に縛られてしまう。

現に私に関する噂はいいものがほとんどで人づてに聞いて不快になるものはなかったので聞き手に周りプライベートはうちに秘める。そんな壁のある距離感が私と職場の最適解なんだなと思った次第だ。