自分は何のために生まれて、何をして生きるのか。
そんなモヤッとした感情を晴れ晴れとした気持ちにさせてくれるアイドルグループがいる。

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中学の頃に応援していたグループが「新たな仲間探し」と題して、昨年、男性アイドルとしては異例のオーディションを開催した。新メンバーを一般公募するという新たな冒険に出た既存メンバーと、その冒険の船に乗り込んだ候補生の挑戦に密着したオーディションは、某配信サイトで視聴することができた。一次審査である書類審査から、チームにわかれてパフォーマンスで魅了していく三次~五次審査まで、気づけば私は目が離せなかった。

そして、特に目で追い続けながら応援していた候補生が最終審査で新メンバーに選ばれた時、私も涙を流さずにはいられなかった。大人になると、夢に立ち向かっていくエネルギーが削られてしまい、挑戦することの楽しさを忘れてしまいがちである。けれど、憧れのアイドルグループのメンバーになりたい、という夢を全力で、よそ見せず真っすぐ追いかける候補生を、素晴らしいと思った。自分と同年代の人たちが、こんなにも一つの目標に向かって走っている。常に前向きで、後ろなんて全く気にしないし、もう前に進むしかないのだから、と語っているような力強い眼差しに、心打たれるばかりだった。

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人見知りでシャイな性格だから、新メンバーの枠が一人だとしたら譲ってしまいそうだと指摘されていた候補生がいた。

その候補生に、気づけば私は目が離せなくなっていた。常に自信をもって笑顔で人前に立ち、華やかさのなかにも過酷な環境に生きるアイドルを目指しているが、どうしても内気な性格がでてしまって自信をもてない。それなのに、どうしてアイドルを目指しているのか。

でも、彼のパフォーマンスはどこか人を引き付ける魅力が、確かにあったのだ。それは、無理に見栄を張ろうとはしない姿勢のなかに、彼の芯の強さがあるのではないかと私は思った。そんな姿を見ていると、心が元気になっていくし、思わず嬉しい気持ちになる。そうやって見ている人を自然と笑顔にできている時点で、もうアイドルそのものなのだと、私は感心させられたのだった。

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この最終審査から早くも二か月半が過ぎたのだが、新体制となったそのアイドルグループを見ていると、私は変わらず嬉しい気持ちになる。嬉しいし、楽しい。

ちょっと辛いなあ、とかもう何のために生きているのかわからなくなったとき、ひよこ組と呼ばれている新メンバーの三人を見ると、自然と笑顔になれる。頑張ってみようかな、という小さくも大きなエネルギーが湧いてきて、明日という未来に希望を見出すことができる。嬉しいというシンプルな感情が大きな渦を巻いて、生きるために必要なありとあらゆるパワーを生み出していく。そう思うと、やはりアイドルの存在は果てしなく素晴らしいものであり、私にとって永遠のヒーローのようだ。

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人見知りでシャイだった候補生の彼は、新メンバーとなった今では、つややかな光り輝くシャイボーイとして努力を続けている。バラエティー番組や雑誌のインタビューを追っかけてみていると、それが明確にわかるのだ。地道にコツコツと重ねていく努力は、必ず誰かに伝わっているはず。だからこそ、常に向上心をもって生きていると、きっと自分が幸せだと感じられる居場所に辿り着く。私は彼らから、こうした人生の道標だといえる大事なことを教わったように思うのだ。

嬉しい、という感情は毎日湧いてくるものではない。それでも、何のために生まれて、何をして生きるのか、絶望の淵に立っているように思えた時、そこから救ってくれる存在が、私の心を「嬉しい」と叫ばせてくれている。