毎朝起きたらお気に入りのマグカップで一杯のコーヒーを飲む。コーヒーの苦味が私を目覚めさせる。こんな日々が続いていることが何より嬉しい。

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少し前の私は、昼前にのそのそと起き上がり、いつまでもスマホを見ているような日々を過ごしていた。休職しているからだ。早く仕事をしなければと頭のどこかで思いつつ、それでも自由気ままな休職生活が楽すぎて、ずっとぬるま湯に浸かっていた。これといって苦しいこともないが、嬉しいこともない、平坦な日々だった。

このままではまずいと思い、社会復帰するためにリワークに通い始めた。リワークとは、休職者が復職できるようにするプログラムだ。平日は毎日通所し、様々なプログラムを受ける。

二週間のお試し期間を経て本支援に移るが、そのお試し期間が辛かった。布団から出られず遅刻はするし、行っても気分は落ちたままだし、家に帰ればへとへとで寝てしまう。
これではいかんと、本支援開始前に気合いを入れ直した。弁当はあらかた前日の夜に準備し、朝の過ごし方を見直した。そして朝の支度のルーティーン化に成功した。

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まず朝起きたらすぐに少量のお湯を沸かす。お気に入りのマグカップにインスタントコーヒーを入れて飲む。その後はテレビをつけて、YouTubeでモーニングルーティーンの動画を流す。人が朝の支度をしているところを見ていると、不思議とやる気が出てくる。動画を流しながら洗濯機を回し、洗濯が終わるまでに朝食・弁当の準備・化粧を済ませる。毎日違うアイシャドウを使うのもワクワクポイントだ。化粧が終わる頃には洗濯が終わるので、洗濯物を干したらいざ家を出る。バスと電車に揺られながら、生配信を見てコメントするのも、日課の一つだ。

元々朝が得意ではないので、もちろん辛い日もある。でもルーティーン化したことで、コーヒーを一口飲むとスイッチが入るようになった。今まで朝とはイコール辛いものだったから、毎日いい気分でルーティーンをこなせていることが嬉しい。

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リワークに通う大きな目標の一つに、家事との両立がある。休職期間が長い私は、リワークが終わって家に帰ると、いつもへろへろで布団に倒れ込む。しかしそこを踏ん張って、部屋を片付けロボット掃除機の電源を入れる。夕飯の支度を始める。そんなこんなで日々を過ごし、なんとか家事も回せている。実家にいるときは、朝は自力で起きられず、母に叩き起こされていた。もちろん夜帰ってきてからも家事などするはずもなく、自分のことだけして寝ていた。そんな私が朝も夜もてきぱきと動いて、家事を回せていることが信じられない。自分でできることがこんなにも嬉しいなんて。

リワークの担当カウンセラーには、「できることを見つけられてすごいですね」と褒められた。家事がうまくいかない日もあるし、朝ドタバタと家を出ることもある。そんな風に、沢山反省点はある。でもできなかったところだけに目を向けると、どんどん自信を失ってしまう。できなかったところがあったって、できていることだって沢山あるのだ。できていることはできていると、自分を認めてあげたい。初めは意識していた訳ではなかったが、カウンセラーに言われて気づいた。

自分を認めて、小さな「うれしい」を積み重ねて、これからの日々も過ごしていきたい。