高校生の頃、アコースティックギター部に所属していた。

毎日の放課後、部室に集まってギターを練習したり、隠れてスマホをいじったり、ただ談笑したり。高校生らしい部活動だった。

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同級生には色んな人がいた。

小さい頃からギターをやっている人。将来、音楽関係の仕事がしたい人。歌が好きで、ギターを練習している人。歌手を目指している人。

みんなそれぞれ個性があって、みんな音楽が好きだった。

同級生の中で、1人圧倒的に歌が上手い子がいた。美人で、作詞作曲もして、音楽に愛されている子だった。帰る方向が同じで、たまに一緒に帰っていたし、その子と仲が良いほうではあったと思う。

2人でカラオケに行けば、その子の歌の上手さに聴き惚れたし、お互い採点の高さで競い合ったりもした。お家にお邪魔して、独学のピアノ演奏に「天才か?」と思ったこともあった。

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その子は、部活の定期演奏会でも自作の曲を歌った。この子はいつかきっと輝く。皆がそう感じるほど、高校生の頃からカリスマ性のあった人だった。

高校3年の受験時、私含めて3人ほどが東京の大学へ進学することになった。そのうちの1人はその子だった。ほぼ同時期に上京するので、「東京で遊ぼうね!」と連絡した。でも、1回も遊ぶことはなかった。

振り返っても、高校生の頃の自分は変なところもあったし、もしかしたら好かれてはいなかったのかもしれない。ただ、私から連絡をすることもしなかった。その子から連絡がこないということは、そういうことなのだろうと思ったから。

それでもSNSアカウントは知っていたので、お酒で酔っ払った状態でたまに見ることがあった。大学ではバンドを組み、ボーカルとして活躍していた。卒業後も、仕事をしながら音楽を続けている様子だった。

1年に1回の頻度でその子のアカウントを検索して、投稿を見て、頑張っていることを見てきた。変わらず夢を追っている姿が、ずっと輝いていた。

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今、私は自分の夢を追い始めている。これまでの人生で頭の隅にあったのに、見ないふりをしてきた夢だ。好きなことだからこそ、夢として掲げてダメだったときが怖かった。

でも、勇気を出して一歩踏み出したら、やっぱり自分に向いているのだと結果が背中を押してくれた。周囲の人たちが応援してくれている。とてもありがたいことだなと思う。

私がこうやって夢を忘れずにいられたのも、その子の背中がいつも目の前にあったからだ。
私にとって、ずっと一番星だったのはあなたなんだ。

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もし、もう一度会える日があれば、有名になったあなたインタビューして、文字にしたい。高校生の頃、抱いていた夢を今思い出したよ。

そして、あなたのおかげだよって伝えたい。一方的にSNSを見ていただけで、ストーカーみたいだけど、私は勝手に勇気づけられていた。

今も彼女は歌っている。いつか覚悟ができたら、彼女のライブに行こうと思う。あの教室よりも広い場所で、彼女の歌声を聴きたい。

そのためにも、私が私を認められるように今日も文字を書き続ける。全部の夢を叶えるため。