「またカラオケに行こ!」何気ない一言に込められた友の思いやり

適応障害のために仕事を辞めることになった日のことは、いまでも鮮明に覚えている。朝から仕事に向かうことに恐怖すら感じ、重圧や人間関係の摩擦が心を蝕んでいくのを実感していた。何度も「もう自分では耐えられない」と思い、とうとう決断するに至った。
その日、心細さとともにすべてを包み込むような決意を胸に、私はいつもそばにいてくれた友達に連絡をした。長い間、日常の中で助け合い、笑い合った相手に、大切な決断を伝えたのだ。すると、予想外に届いた返事は、「またカラオケに行こ!」という、軽妙で何気ない一言だった。その一言には、これまでの温かい友情と、何よりも私の心情を理解してくれる深い思いやりが込められているように感じられた。
以前、定期的に楽しんでいたカラオケ。その時間は、仕事のストレスを忘れ、悩みや不安を一時的にでも置き去りにするための大切なひとときだった。好きな曲に合わせて、心から思い切り歌い出すその瞬間、友達と顔を見合わせながら笑い合い、日常の苦悩を一緒に乗り越えるかのような一体感を感じていた。あの日の温かな思い出は、どんなに辛い時でも私の心の支えとなり、希望の光をともしてくれた。
社会では、肩書きや地位によって人を判断する風潮が強いと言われるが、私の友達はそんなことを一切気にすることなく、ただ純粋に私を友として受け入れてくれる。どんなに苦しい状況や辛い瞬間にあっても、決して私を見下すことはなく、むしろ寄り添うような温かさで、時に距離感を忘れるほどに心を許してくれていた。これまで友達自身も数々の困難や辛い経験を乗り越えてきたからこそ、今回の私への支えは、自然でどこか運命的なものさえ感じさせたのである。
「またカラオケ行こ」というその言葉を聞いた瞬間、私はまるで暗闇の中でぽっと灯る一筋の明かりを見たかのように心が温かくなった。どんなに苦しい局面にあっても、友情というかけがえのない絆があれば、再び前を向いて歩いていけるんだという確信が生まれた。これからの新しい人生の章を、自分のペースで歩んでいく中でも、昔と同じ気持ちで友達とカラオケを楽しむ日々が、再び訪れることは間違いないと感じた。
またあの頃のように、友達と笑顔でマイクを握り、楽しい会話とともに歌声を響かせる日がすぐそこにあると信じながら、私はこれからの未来に向けて、一歩一歩前進していく決意を新たにしている。そして、この決断を通して感じた温かい支えや思いやりは、私にとって何よりの宝物となった。
さらに、仕事を辞めた後も新しい職場が決まり、心も次第に安定していく中で、収入も安定し、また笑顔で友達に会える日常が戻るとき、ただ単にカラオケを楽しむだけでなく、互いの成長やこれまでの苦労を語り合いながら、より深い絆を感じられることを確信している。
私はこれからも、その友達と変わらぬ親しみを持ち続け、友達が困っているときには全力で助け、共に喜び、時には悩みを分かち合う関係を大切にしていきたいと思う。友達思いで優しく、価値観の合う人と出会えたことは、私にとって運命的な奇跡だと感じる。新たな人生のステージに向かって前進しながらも、友情との温かい日常が、私にとって何よりの励みとなるだろう。
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