手順のすべてに込められた優しさ。父が作るゴーヤチャンプルは特別だ

私は夏になると猛烈に食べたくなる食べ物がある。
それは父の作るゴーヤチャンプルだ。
苦みのあるゴーヤは薄く切られ、太めに切られた厚揚げとふわふわの卵が混ざり、薄切りの豚肉のおいしさといったら、これがもうたまらない。
うちの両親は共働きだったため、母が作れないときには、父が作ることも珍しくなかった。
父が作る料理は真面目そのもの。
ゴーヤチャンプルを作る手順として、まず第1にゴーヤを縦半分に切り、中の白い綿の部分をスプーンでとる。そのあと、2ミリ程の厚さに切っていく。
ゴーヤの苦みが気になる場合は、塩をまぶしておいておく。水洗いをして水気を切ることも忘れずに。
厚揚げは少し太めに切るのがコツらしい。大体厚さは2センチ、お好みで3センチに切ってもよい。
卵は事前に溶いておく。
豚肉は、5センチ幅に切る。
材料を切り終え下準備が整ったら、フライパンに油を入れて熱し、厚揚げを炒める。
厚揚げに少し焼き目がつくまで炒めたら、一度取り出す。
豚肉に火が通るまで炒める。
ある程度火が通ったら、次にゴーヤをいためる。
ゴーヤがしんなりしてきた頃に、先ほど取り出した厚揚げを投入。
あとは市販のゴーヤチャンプルの素を入れて混ぜ、溶いた卵を入れて少し固まってきたら、完成だ。
今考えると、このゴーヤチャンプルは手順が単純なように見えるが、 意外にも料理の工程が多い。
父は家族のためにいつも量を2倍にして作ってくれていた。
その優しさには感謝してもしきれないほどだ。
味が濃い目に作られている父のゴーヤチャンプルは、ごはんにも抜群にあうため、何度もおかわりをしていた。
父の作るこの料理は、なぜかホッとする味だ。
私が小学生の時も、甘い味のほうがおいしく感じるような子供で苦みが苦手なはずなのにこれだけは美味しいと言ってよく食べていた。
私は食べ終えたあとに、「またお父さんの作ったゴーヤチャンプルが食べたい」とニコニコしながらよく言っていた。
父はそんな私を見ると、照れたような、嬉しいようなといった顔をして、
「おう。また作るからな」と返事をしてくれた。
私が高校生になり部活から帰ってきて、父が作っているものがゴーヤチャンプルだとわかると、疲れが吹っ飛び、それにありつける私はなんて幸せ者なんだと有頂天になっていた。
「お父さんの作るゴーヤチャンプルは、いつも美味しいし元気出る!夏が来るのが待ち遠しいくらいだよ」
私はそんな感想を父に伝えていた。
この料理はゴーヤが安くなる夏にしか食べられないもので、特別なものだった。
夏の暑い時期に食べると元気が出るのは、あながち間違っていないようだ。
このゴーヤチャンプルは本来沖縄の郷土料理である。
年間を通して暑い時期が続く沖縄では、チャンプルーという料理をよく食べる。
漢方でもゴーヤチャンプルーは養生の料理の1つだ。豚肉が体の熱を冷ます役割があるらしい。
少し話がそれたが、父は沖縄料理に興味があって挑戦して作ってくれた。
これが家族に大うけだった。
私も父のようにゴーヤチャンプルに挑戦してみようということで、作ってみた。
工程の多さに若干のめんどくささを感じつつも、できたての自分で作ったゴーヤチャンプルはとてもおいしく感じた。
父の作る方法を習いながらも、自分で作る際にはかつお節を入れてみたりと少し工夫をしてみるのも面白い。
この夏もまたゴーヤチャンプルを作る機会が訪れる。
そのことを考えるとわくわくが止まらないのであった。
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