小学一年生から、10年以上の長い長い恋。これで区切りをつけるね

その人を好きになったのは小学一年生の時。女子小学生が好きになるような足が速くてやんちゃな男子とは正反対で、静かでさまざまな平均値を集めたような人でした。
目で追うようになったきっかけは覚えていないけれど、もしかしたら男子が少し苦手だった私には、他の男子とは違って珍しく見えていたのかもしれません。
同じ中学校に入学し、一年生の時に初めて同じクラスになりました。今思うと、この時が一番片思いの成就に近かった気がします。
私は彼の静かで優しいところが好きでした。黒板が見えなくて困っているとき、無言で自分の写し終わったノートを真ん中に持ってきてくれるところ、掃除中に誰かが空いている水道を探しているとき「ここどうぞ」と言ってわざわざずれるところ、そんな風に周りを気遣う姿に凄く惹かれました。
同じクラスになってからは少しずつ話すことが増えて、テストが返ってきた時にはお互い目を合わせて点数をジェスチャーで教えあったりしました。それが凄くうれしくて、定期テストが近づくとドキドキするようになりました。
中学二年生でクラスが変わってからは、顔を合わせることもなくなりました。彼はサッカー部で、私は吹奏楽部でトランペットを吹いていました。練習場所のベランダからは校庭が見えて、私はほぼ毎日そこからサッカーをしている彼を見ていました。ユニフォーム姿だと日焼けしている肌が妙にかっこよく見えて普段とは別人のように見えました。当時の私は話しかける勇気はない癖に、彼に関わっているものを詳しく知りたくて、全然知らないサッカーのルールや選手をひたすら覚えて、プロ選手の試合動画を見ていました。
そうこうしているうちに中学三年生になり、また同じクラスになりました。彼は相変わらず静かだったけれど、もう平均値ではありませんでした。中学に入ってから急に身長が伸び、勉強も運動も周りより出来るようになっていました。私と同じように彼を好きだという女子が現れる度に、その中の誰かと付き合うのではないかとハラハラしていました。好きだと言ってしまおうかとも考えたけれど、中学の時の私はなかなかに家庭の問題を抱えていて、本当に自分に自信がありませんでした。
受験が終わって、彼から連絡がありました。自分が第一志望に合格したこと、それと知人から聞いた私の合格を祝う連絡でした。
卒業式の日、私は彼に名札を貰いに行きました。それは告白して付き合う為ではなくて、諦める為でした。結局、貰った名札は高校三年間の間も大切に引き出しにしまって、時々何か嫌なことがあると見返していました。
それから私は高校で告白してくれた人と付き合って、初めて彼氏ができました。いい人だったけれど、お互い言葉にしないことが多くて、手も繋がないまま半年程で別れました。私は多分、まだ彼が好きなのだと感じました。
大学生になって久しぶりに中学の同級生に会いました。皆懐かしそうに中学の思い出を語って、その中で、もう時効だからと彼が中学生の間、私のことが好きだったということを聞きました。そして今は付き合って三年目の彼女がいるそうです。彼女は積極的にアプローチできない自分を引っ張ってくれるとすごく幸せそうでした。皆の中で過去になったものを私だけ高校の間も、大学生になってもずっとそのまま持ち続けている感覚がしました。
「もし名札を貰った時に告白していたら」
「くれた連絡は彼なりのアプローチだったのではないか」
など、沢山考えても今更無駄で、考えるのを途中でやめました。彼に彼女がいて、彼が過去にしたなら、私もそうするのが当たり前だと思いました。
ざっと十年以上、長い長い恋だったけれど、私もこのエッセイを区切りに前に進みたいと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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