私は読書が好きだ。様々な人生経験の著者が、自身の持つ世界観や考え、大切なことを時間をかけて紡いだ言葉で届けてくれる本が好きだ。

◎          ◎

エッセイを書くようになって気づいたことは、文書を書く、思い描いていることを言葉にするというのは難しく、時間がかかる。そんな苦労をしながらも、一冊の本を作品を、誰かの心に届くようにと作り出された結晶を味わう時間はとても贅沢で至福の時間だと思う。

そして時々、自分の考え方を変える大きな影響力を持った作品に出会うことがある。私はある本に出会って、「自分」というものの捉え方が大きく変わり、前より少し生きやすくなった。腑に落ちる感覚、感謝、肯定感、期待など、とても温かい感情とともに、今までの「自分」に対する向き合い方に少しの後悔と客観的な謝罪の気持ちを持った。

以前の私は、他人のことを考えること、優先することが美徳だと思っていた。家族や友人、パートナーなど周りの人の意見や行動に合わせる、そんなことばかりしていた。しかしこの本を読んで、私が美徳だと思っていたこの思考はエゴである、そう感じるようになった。相手に合わせることで、自分の言動の責任を持たず、他人を気遣っているようで、実は周りから見られる自分ばかり気にしていたようだ。

◎          ◎

ではこの先どう改めれば良いのだろうか。私が読んだこの本は自己啓発本ではなく、物語だ。だから、主人公の女性が考えを変えた後の感情、人生までがしっかりと描かれていた。簡潔に示すと「自分の気持ちに気づき、優しくすることで、初めて本当の意味で他人に優しくできる」という内容であった。

まずは自分の心の声に耳を傾けて、大切にする。私はずっと自分のことを蔑ろにしていたようで、幼き自分に「ごめん」という気持ちが湧いた。自分の感情に意識を向けると、自分に対して否定的な考えばかりしていることに気づいた。

そして、ネガティブな感情(心配や恐れなど)が沢山あることにも気づいた。例えば、母と外食をしようとなった時のお店選び。私は必ず「なんでもいいよ。お母さんは何食べたい?」と聞いていた。それは、何が食べたいかを考えるよりも、私が選んだものが母の気分に合わないかも、思っている予算よりも高いお店を言ってしまうかも等という気持ちが大きくて答えられず、決断や主体性を放棄していた。

相手に合わせてばかりいたから、自分の感情すらわからなくなっていた。優しさや思いやりと自分勝手な過剰な気遣いとの違いがわからなくなっていた

◎          ◎

本を読んでそんな自分に気付いてからは、前よりも少ししたい事、やりたい事を言葉にできるようになった。初めは意見することに不安ばかり感じていたが、思っていたより周りの人は寛大で、優しさに触れることができた。

自分のことだから……と蔑ろにせずに、1番近い存在だからこそ、しっかりと見つめて、時には「ごめん」と伝える。これからも、そんな労わり方ができる大人になりたい。