私は大学に入るまで、ほとんど不登校のような状態だった。学校には通ってはいたものの、毎日きちんと登校することはできず、教員以外の誰かと話すこともなかった。授業もまともに受けられず、行事やイベント、部活動に参加したことも一度もない。テストで0点を取ったこともあるほど、何もできなかったのだ。

それまでの思い出といえば、せいぜい小学生の頃の運動会か、低学年の頃に取った100点満点のテスト用紙くらいだろう。しかし、私はもともと目立ちたがり屋で、好奇心旺盛、何事にも積極的に関わっていくような性格だった。だからこそ、大学生になった今、これまでやったことのないことに挑戦しようと、思いきって人と関わってみることにした。

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入学式では人と話すどころではなかったが、翌日のオリエンテーションで、複数人に話しかけてみた。6年以上、家族以外の誰かとまともに会話をしたことなどなく、当然、話題はまるで噛み合わなかった。それでも不思議なことに、少し経つとグループワークが始まり、自然と人と関わる機会が増えていった。そして、いつの間にか数人の友人ができていた。

「なんだ、いけるじゃん、私」

それからというもの、何か募集があれば、どんなものであれとりあえず立候補してみるようになった。それには、ある教授から言われた「なんでも経験してみなさい。それが必ず将来の糧になるから」という言葉を信じていたのもあったのだろう。

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アルバイトはしていなかったが、ボランティア活動には積極的に参加した。しかし、どれも気持ちよく終わることはなく、いつも自分の実力不足に歯がゆさを感じてばかりだった。特にアドリブが苦手で、臨機応変に対応できない私は、そのせいで何人もの人を困らせ、呆れさせてしまった。指示を出す立場を任されたときも同じで、他の人には当たり前のようにできることが、私には何一つできなかった。

胃が痛くなるような出来事の連続で、何度も辞めたいと思ったが、それでも褒めてくれる人や労ってくれる人がいて、私は何とかすべてをやり遂げた。

そんな生活を半年ほど続けたころ、私は入院した。無理をしすぎた反動だったのか、網膜剥離で手術を受けることになり、休みなしだった後期の単位を落とした。それでも諦めず、退院した翌日には、学会のスタッフとしてしっかり8時間働いた。

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私はいつも、背伸びばかりしている。けれど、高校までの私と比べると、明らかに人が変わったようだった。まともに発声すらできなかった女が、今では大勢の前で呼びかけができるようになった。授業ひとつ受けられなかった女が、今では朝から夕方まで講義を受けられるようになった。外出すらままならなかった女が、今では一人で買い物ができるようになった。人と食事ができなかった女が、今では友人と笑いながら食事ができるようになった。

これらはすべて、あの日のオリエンテーションで、精一杯の背伸びをして、「私はあなたたちと同じレベルの人間ですよ」と無理やり振る舞って、必死に話しかけたおかげだろう。実際に同じレベルだったかと問われれば、正直疑わしいところはあるが。

もちろん、今も背伸びは続いている。おそらくこれから先、背伸びをせずに済む日は来ないだろう。でも、それが今の私のアイデンティティとなった。「必死に背伸びをして、必死に何かに喰らいついていく女」。これが、長年孤独を味わってきた私の姿である。

どんな壁が立ちはだかっても、諦めずに立ち向かい続けた私を。うまくいかなくても、決して投げ出さず、受け止め続けた私を。私は、何よりも誇りに思っている。