冷凍庫にアイスがあった。それを買っておいた私よ、ありがとう

2025年4月30日午後11時。静かな日常の中で、私は思いがけない幸せと出会った。
午後10時頃にお風呂に入り、上がったら化粧水をつけ、長い髪をコームでとかし、癖がつかないように前髪だけを少し乾かして洗面所を出た。いつものように髪を乾かそうと椅子に座ったら、急にアイスが食べたくなった。
でも、そんな都合良く冷凍庫にアイスがあるわけないし、だからと言って髪を乾かしてからわざわざコンビニに買いに行くかと聞かれたら、そこまでは求めていない自分がいる。数秒のうちに葛藤があった。
すると、あることを思い出し、私は即座に椅子から立ち上がって、冷凍庫を力強く開けた。目の前に飛び込んできたのは、パピコの二つのうちの一つ。奇跡的にアイスがあった。冷たい空気が流れている私の影で少し暗くなった冷凍庫の中に、アイスだけが光っているように見えた。
私は思わず「え、ある!!」と声を上げた。ここ最近で一番大きな声を出した気がする。一人暮らしの部屋に私の声が響いていた。この小さな奇跡、小さな幸せが、暗い私の心に明かりを灯してくれたのだ。
2月後半から、私は鬱のような状態になった。1年前の大学1年生の春には経験しなかったこの状況。同じ時期なのにこんなにも状況が違うのかと驚くほどだった。
鬱の状態が始まってからは、ちょうど春休みだったということもあり昼夜逆転生活を送り、予定がない日には何もする気が起きず、ずっとベッドにいて、泣いて、泣き疲れて寝る、ということを繰り返していた。生きる意味を探すようにもなり、具体的な悩みの原因もよく分からず、考えれば考えるほど涙がこみ上げてきて、生きている心地がしなかった。
そんな状態が2月、3月、そして4月と続き、ついに大学が始まって大学2年生になった。全てのことに対して、ネガティブな感情を持つようになった私は、大学に行っても、気持ちを上手く切り替えることができなかった。授業中に静かに泣いてしまうこともあった。
大学が終わって家に帰ると、吸い込まれるようにベッドに横になる。一日一日を乗り越えることで精一杯の私。そんな私の心を温めてくれたのが、一つだけ残っていたアイスだった。
ここでなぜアイスが一つだけ残っていたのかを考えた。私はよくアイスを食べる。パピコもたまに食べる。でもいつもは一度に二つとも食べる。もう片方のパピコを食べた時の私を思い返してみた。
鬱状態だった私は、アイスは食べたいけど、二つ食べる元気はなかった。二つ食べてしまうことに謎の罪悪感もあった。だから、もう一つはまた今度食べよう、と私らしくない判断をして、アイスを袋に入れて冷凍庫に仕舞った。つまり、この時の私が、数日後の私を幸せにしたのだ。この結論が出た時、自分の口角が上がった気がしたので目の前の置き鏡を見ると、微笑んでいる自分が写っていた。なんだか幸せそうだった。
鬱状態の時の私がもたらした小さな幸せ。自分なんて無意味な存在だと思っていたのに、そんな自分が自分を幸せにした。それを気づかせてくれたのは、残っていた一つのアイス。アイスを温かいものだと思ったのは初めてだった。新しい感情が私の中に生まれた気がした。
ありがとう、あの時の私。無意味な存在なんかじゃない、ちゃんと役に立っていたのだ。アイスに夢中になりすぎた。食べ終わった頃には、濡れた髪はほとんど乾いていた。お風呂上がりの私の温かい手は、握っていたアイスでだいぶ冷やされたけど、なんだか心は温かくて、前とは違う自分でいることができた。
アイス一つで自分がこんなにも変わるのだと気づけた大事な日。この日は小さな幸せを見つけることができた自分を思う存分に褒めて、久しぶりにぐっすり眠った。
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