謝ろうと思えたから成人式に行った。でも謝れなかった

断捨離癖、のようなものがついている。ちょっとしたことで急に誰かのことが嫌になって、冷たい態度をとるようになったり、連絡先を消したりしてしまう。
私は裏で悪口を言うのが許せないタイプで、不満がうまく発散できず、本人に全て向いてしまう。さらに悪いときには、言葉で表現できずに感情をぶつけてしまうということがあった。だから実は、喧嘩別れの人が複数人いる。
私には、成人式の日に謝ろうと思っていた人が2人いた。今回は成人式の日の思い出を書いてみたい。
1人は、小学校高学年のときに1番仲のよかった友人のKちゃん。
彼女は、とても面白い人で気が合ったのだが、口が軽いところがあって、私の恋バナを言いふらすことが度々あった。嫌なことは嫌だとしっかり言うべきだったのに、私がそれをさぼってしまい、何も言わずそのまま距離を置いたために、疎遠になってしまった。
1人は、初恋のSくん。彼とはどうやら両思いであったようなのだが、ちょっとしたことから齟齬が生じ、ちょっとしたことが気に入らなくて、喧嘩別れになった。以来、クラスが同じになることも一緒に何かをする機会もなく、彼とは全く会話をしていない。本当は好きなままだったのにーー少なくとも友人としては今もずっと好きな人である。
成人式には、小中学生のときの同級生が集まる。私は、高校・大学と1人で進学したので、小中学校の同級生とはかなり疎遠であった。SNSもあまり積極的にやらないし、連絡をとっているのも数人。実家の近所で、偶然同級生と会うということもほとんどなかった。
正直なところ、成人式に積極的に行きたい理由はなかった。地元はものすごい田舎というわけではないが、狭い世界であり、狭い世界特有の悪いところが多かった。地元を出て、東京の大学に通っている私は圧倒的異端、狭い世界は異端には厳しい。だが、成人式に行かない、という選択をとることも意味深で面倒であったので、親のためにもちゃんと成人式に行くことにした。そして、行くのであれば、上の2人にちゃんと会って謝ろうと思った。謝ろうと思えたから、成人式に行くつもりになった。
成人式の日。目立ちたくはなかったので、いつもの友人と一緒に、会場の端の方で周りを見渡していた。式が始まる前の集合の段階では、2人とも見つけられなかった。
式もそこそこに。式の最後の全体写真撮影のとき、ばらばらと人が集まったのだが、気がつくと隣にKちゃんがいた。心臓がばくばくだった。
覚悟していたが、声をかけてよいものか、写真撮影が終わってからの方がよいか、と悩みながら、気付かぬふりをして反対側の友人とばかりしゃべっていた。Kちゃんも他の人と会話していた。やっぱり謝らなくていいかな、とまで思ったりした。
一瞬、会話が途切れて、沈黙が流れた。そのときに、Kちゃんの方から、「ききき?ずっと会いたかったんだよね」と声をかけられた。相手の方から声をかけさせてしまった、と複雑な気持ちになりながらも、私はそのままの勢いで、「あのときは本当にごめん」と言った。……私の力かと言われると微妙だけれど、運も味方したということで。結果的に謝ることができたので、よかった。
式が終わったあと、会場の広場では同級生同士が写真を撮ったり連絡先を交換したりしていた。私は実はこの時間を恐れていたのだが、嫌な絡まれ方をすることはなかった。狭い世界ではあるがーー自分も含めて、みんな大人になりつつあるようだ。Kちゃんとも写真を撮って、残りはSくんを探すのみであった。他の同級生とも交流をしながら、横目で彼を探す。
それが、ずっとずっと探しているのに、一向に見つからない。Sくんは地元大好き人間なので、正直来ないはずはなかった。……いない。さらに、彼と仲のよかった友人も見つからない。ここで会わなければ、もう会う機会はない。クラスは違うので式後のクラス会で会うということもない。彼のSNSのアカウントを探したこともあるが、見つけられなかった。正直、最後の機会だった。
とうとう会場全体に声がかかり、全員がその場から追い出された。夜のクラス会の時間が迫っていた。私はそのまま流されるように会場から出て行った。結局、謝ろうと思った気持ちはそのままやり場がなくなってしまった。
成人式を終えて。Kちゃんに会えて、謝ることができたことは本当によかったと思っている。私にとって一番気にしていた喧嘩別れであったから、そのもやもやが晴れたことは大きな前進であった。一方で、Sくんに会えなかったことが悔しい。今後もう、彼と会う機会はないだろう。謝りたい気持ちに加えて、成人式に行くきっかけをくれたことに感謝する気持ちもあるーーKちゃんに謝ることもできたから。だからこそ今でも、再会する見込みがないことがやりきれないと思う。
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