彼氏を優先してしまった、大人になりきれなかった成人式

成人式の日、10年来の親友と喧嘩をした。
小学校しか被っていなかった私たちだけど、中学生になっても、高校生になっても、お互いの家を行き来するほど仲良しだった。だから成人式の日も、当然のように「一緒に過ごす」と決めていた。
――振袖で写真を撮って、プリクラを撮って、夜はお酒を飲みながら将来について語り合う。
けれど、私はその約束を裏切ってしまった。
式の数日前、彼氏から「せっかくだから今日会いたい」と誘われた私は、なんとなくその予定を被せてしまった。彼とは遠距離恋愛でもなんでもない。ただ「振袖の私」を見てほしい気持ちと、恋人との時間を優先したいという気まぐれが、あの日の私の行動を決めた。
プリクラを撮ったあと、彼女に「ちょっと用事あるから」とだけ伝えた。
「……一緒にご飯食べるって言ったじゃん」
その声には、怒りというより、諦めが滲んでいた。
「前から思ってたけど、ほんとに彼氏優先するよね」
胸にグサッと刺さった。
私は反射的に「急なことだったし、仕方ないじゃん」と言い訳をしてしまった。自分を正当化することに必死で、彼女の気持ちを想像する余裕すらなかった。
「もういい」
その一言を最後に、彼女は去ってしまった。
私はしばらくその場に立ち尽くして、結局、何も言えなかった。
LINEは送ったものの、返信は来なかった。
既読はついているという事実が虚しさを増長させた。彼女の返信を待っているうちに、私も「今さら何を送ればいいのかわからない」と思うようになり、連絡は少しずつ途絶えていった。
あの日、きちんと目を見て「ごめん!今から彼氏に連絡するから、予定通りご飯行こう」と言えていたら、何かが変わっていたかもしれない。だけど、私は彼女を優先できなかった。それだけじゃなくて、謝ることすらできなかった。
そんな幼い自分が、今となっては悔しい。
でも、全く希望がないわけじゃない。
最近、ようやく彼女からLINEが来るようになった。相変わらず返信はゆっくりだけれど、スタンプや「笑」の文字があると、ほんの少しだけ昔の距離感に戻れた気がして嬉しくなる。
そして、つい先日――彼女が、「夏休み、予定合えば会えるかも」とぽつりと送ってくれた。たった一文なのに、私はトーク画面を何度も何度も見直してしまった。
会えるかもしれない。今度こそ、ちゃんと顔を見て話せるかもしれない。そして、ようやく素直に「あの時はごめんね」と言えるかもしれない。
「ごめん」が言えなかった日が、私に「ごめん」の大切さを教えてくれた。
あの日の私は、まだ大人になりきれていなかったのだと思う。でも、今なら関係を取り戻す一歩を踏み出せる気がする。
今年の夏、きっとまた笑い合えると信じている。そのとき、私の「ごめん」が彼女の耳に届きますように。
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