「選挙で、インターネットでの投票を導入するべきですか?」

中学3年生だったころ、ある日の公民の授業で、先生が私たちに問いかけた。私は、その問いを聞いたとき、インターネットで知ったある出来事を思い出した。

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何年か前、私の好きなアニメでキャラクターの人気投票が行われた。インターネット上のWebサイトから投票でき、得票数の多いキャラクターには、限定の壁紙が制作・配信されるという仕組みだった。

ところが、1位になったのは、主人公でも、ファンの多いイケメンのライバルキャラでもなかった。セリフも登場シーンも、ほとんどなかったキャラクターだった。その結果を見たとき、私は正直、とても驚いた。

「どうして、人気キャラたちを抑えてそのキャラが1位になったのか?」

不思議に思った私は、その理由を調べてみた。

すると、インターネット掲示板で「このキャラを1位にしよう!」という呼びかけが行われていたと分かった。いわゆる「ネタ票」や「組織票」と呼ばれるもので、一部の人たちが面白半分で票を集中させたことが、結果に大きな影響を与えていた。

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アニメの人気投票なら、「面白半分」で済む話かもしれない。しかし、もしこれが現実の国政選挙で起きたらどうなるだろうか?

深く考えずに入れられた票によって、本気で国を動かす覚悟のない候補者が当選してしまったら。逆に、本当に当選すべき候補者が、悪ふざけの影響で落選してしまったら。それは決して、ありえない話ではない。たとえセキュリティの問題がすべて解決されても、「投票そのものを軽んじること」までは防げないのではないか。私は、その点こそが最大の問題なのではないかと思った。

授業での議論では、「個人情報保護やセキュリティの観点から、ネット投票の実現は難しい」という意見が多数だった。しかし、私はもう一つ、「気軽すぎる投票は、かえって責任感を失わせるのではないか」という点にも注目すべきだと考えた。

投票所へ足を運び、自分の手で候補者の名前を記入し、投票箱に入れる。この一連の行動には、「私はこの一票に責任を持っている」という意識を自然に芽生えさせる力があるのではないだろうか。

たった一票だったとしても、たった一票だからこそ、大切にしたい。
その思いを強くしたのは、アニメの人気投票で起きた「ネタ票」の一件だった。あの出来事から、「投票することの意味」や「1票の重み」、「組織票の影響力」、そして「多数決に潜む危うさ」について、自分なりに考えるようになった。

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私は選挙で納得のいく一票を投じるために、2つのことを大切にしていきたい。
1つ目は、政治や経済の基礎知識を身につけることである。国の仕組みを知らなければ、ニュースを見てもその背景が理解できず、正しい判断ができないからだ。
2つ目は、今の日本が抱える課題を知ることである。その原因と、考えられる解決策を自分なりに整理しておきたい。日本も、そして世界も日々変化している。だからこそ、テレビや新聞から情報を得て、自分なりの意見を持つことを習慣にしたい。

「この人なら、日本の未来を託せる」と思える候補者に、自信を持って一票を投じたい。

それが、私なりの選挙との向き合い方だ。