投票所の朝は早い。
真っ暗な体育館に足を踏み入れることに最初は躊躇ったが、慣れた今ではもうまぶたを擦りながら何となくでたどり着いてしまう。

◎          ◎

投票所の開場は7時。
毎回、投票箱を開けたい人が並んでいるので、もっと早くから投票所の仕事は始まる。

公務員になって、7年。選挙になると毎回駆り出されてきた。

投票事務と開票事務両方にあたると、一日の勤務時間は20時間近くなる。朝6時半から深夜3時位まで。次の日も、若手のうちは中々休むことが出来ない。

正直最初はなんてめんどくさいんだろうと思った。非効率過ぎるだろと腹もたった。
期日前投票はいつも大体2週間はある。朝も早く夜も遅い。それなのに日曜まるまる一日投票所を設けて、その後すぐ開票?開票も一つ一つ開けて選別して…途方もない。

バカバカしくて毎回投票事務に当たるのが嫌だった。
けれど、7年間事務をしていて思う。投票所にみえる方の切実な思いが。

投票所に見える方はやっぱりご高齢な方が多い。
足を引きづって。車椅子を自力でひいて。もう車で来れないんだと笑いながら、暑い中、寒い中、シルバーカートを使って1時間かけて投票所に見える方もいる。目が不自由なご婦人の代理投票をするのも、もう恒例になった。

◎          ◎

投票箱に投票した後、願うように手を合わせる方もいる。

それをみて、思うのだ。
それだけ、選挙は大事なんだと。

私は正直、自分が選挙事務に当たるまで投票なんて興味がなかった。
自分1人の意見なんて、通るわけないし、政治は正直よく分からない。

だけど、こういう場面を見ると自分が情けなくなる。この人たち一人一人に生活があって、この先の日本や未来を見すえ、自分で考えて、1票を投じている。
きっとここまで来ることすら大変な生活なのに、どれだけ時間がかかろうがそれが有難いことかのように。

そういう人達をみると、若い人たちが言う「時間が無いから」とか「日曜日はちょっと」という言葉に正直イラッとしてしまう。ご高齢の人に有利な政策ばかりだと言われるが、この現状をみると仕方ないと納得せざるを得ない。

◎          ◎

今私たちには投票する権利がある。投票所に必死に来て、投票用紙を大事そうに受け取るご老人を見ると、声をあげられなかった時代を感じて、気が引き締まる。

だから私も投票事務に真摯に向き合いたい。
投票の仕方が分からない若い人、不安そうな人にはなるべく声をかけるようになった。
だれもが気持ちよく投票出来るように、もう来たくないなんて思われない投票所にできるように。

投票所はいつでも開かれてますよ。どうか、みんな来てください。分からない事があったらなんでも聞いてください。眠い目擦りながら待ってます。