私が辛いものを食べるときは、必ず汗をか覚悟をする。

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私にとって、辛さは2種類に分けられる。ヒリヒリとする辛さを持つものと、汗をかく辛さを持つものだ。もちろんどちらも持ち合わせているものもある。普段私が食べている辛いものは、ヒリヒリする辛さを持つことが多い。私もそれを好んで食べている。だが、たまに汗をかく辛さに出会うときがある。

代表的なのは、カレーなどのスパイス系だ。味は美味しく、さほど辛さを感じないこともあるのだが、少しすると毛穴の開きを感じる。その後1分もしないうちに、ツーっと汗が流れ落ちる感覚がわかり、一度汗を感じると止まらない。辛いものを食べているという感覚と、デトックスができている感覚になるのが楽しくて、定期的に食べたくなる。

特に食べる機会が多いのは、仕事を終えたあとだ。一日仕事をして、体も疲れているが、何よりメイクも崩れている。帰宅するだけのためにメイクを直すのは面倒なので、夜の暗さを信じて、マスクもせずに家に帰る。たまに外食をすることもあるが、メイク直しをせず店に入って食事をする。このタイミングで辛いものを食べれば、汗をかいてもこれ以上メイクを崩すことはない。一日働いた自分と服で、汗をかいても影響がない状態が完成するのである。あとは家に帰ってお風呂に入って寝るだけ、となれば自然と覚悟も決められる。辛いものを食べない手はない。

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辛いものを食べるとき、必ずといっていいほどしてしまうのが、辛味ソースを全量入れることだ。ビビンバや冷麺についている後入れの辛味ソース。少しずつ入れていたときもあったのだが、辛さを感じられるまで入れていたら3/4ほど入っていることが多々あった。それなら全量入れても変わらないのではないか、と入れ始めた。味も大きくは変わらなければ、少し残すのがもったいないと思ってもいたため、食べてしまえ、と入れたのだ。辛いけれど、旨味も感じられて、案外ちょうどよい辛さだと思った。全量入れても意外と辛くないと発見してからは、辛味ソースはすべて入れるのが私の定番となった。

最初は、こんなに入れてしまって大丈夫だろうか、とドキドキしながらも一気に入れるというイベント性を勝手に感じながら食べていた。今はこれまでの経験があり、全て入れても大丈夫という安心感と、この味を欲しているという自分の気持ちへの信頼が作られている。逆に満足できないくらいだ。

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こうして作った、理想の辛さご飯を食べ終えたとき、言わずもがな満足感は大きい。口の中をヒリヒリさせながら、汗をかきながら食べ終えたあとに飲む冷水がたまらなく美味しいのである。冷たいビールをグビグビと飲むように、私は辛いもののあとに冷水を飲む。ジョッキを飲みきったあとのプハーッまで同じように再現できている気がするくらい気持ちよく飲める。私はアルコールには弱く、ビールを飲む気持ちよさはイメージでしかないが、辛いものを通してその気持ちを理解できる。断言できるくらい飲みっぷりはいいと自負している。

辛いものは、一度食べるとやみつきになる味だ。満腹になってもまだ食べられそうなくらい食欲をそそられる。食べ終わったお皿を見て、もう少しだけ香りを堪能していたいと思うときや、またすぐに食べようと心に決めるときもある。私にとってはなくてはならない存在で、いつでも頼りたくなる存在だ。体が辛いものを欲しているとき、汗をかいて代謝をよくしたいとき、これからもたくさん食べていくと決めている。

私が辛いものを食べるワケは、私が本能的に欲しているからだ。食べれば満足度は高く、食欲も気分も満たされる。好き嫌いだけでなく、私を満たしてくれるというポイントも好きな理由のひとつである。