カナダでワーキングホリデー中。自分を変えたくて、パーマをかけた

わたしは今、カナダでワーキングホリデー中。
初めての海外生活。その上、実家を出たのはこれが初めて。慣れない英会話に、他国の学生と関わる語学学校。海外での仕事。挑戦だらけの日々を過ごして、あっという間に半年が経った。
ある程度生活が落ち着いたからだろうか、急に髪型を変えたくなった。
日本にいた時には銀行員だったわたし。髪型は清潔感が第一だからと、すっきりと短いハンサムなショートヘアを続けていた。もちろんその時は気に入っていたけれど、今思えばショートヘアは、銀行員のわたしが会社の中で個性を出すために選んだ髪型だった。かっこよくて、爽やかで、信頼してもらえそうなわたしになるための飾り。
銀行を辞めて海外に行くと決めてから、半年かけて肩まで髪を伸ばした。出発前、ケアがなくても結べばいいかと、海外にいる間は髪を切らないと決めていた。
そんなわたしだったが、どうしてもくるくるのパーマにしたくなった。
日本にいる時と変わらず、寝て起きて仕事をして、休みの日はダラダラしてしまう、そんな日々をただ変えたかったのかもしれない。せっかく海外にいるんだから、ちょっといつもと違うわたしになってみたかっただけかもしれない。
美容師さんに要望を伝えながら鏡を見ると、不安そうな顔をしたわたしがいた。「くるくるにしたいんですけど、似合うか心配で。でもやってみたいなと思ってて。長さもちょっと切って、スッキリしたくて」
「いいですね、すごいかわいいと思います」と言ってもらい、お願いした。
パーマをかけている最中は、某アニメのおかあさんみたいな頭になっていた。カーラーを外しても、全然予想通りになる気がしなかった。
でも、乾かしてセットしてもらうと、そこには理想のパーマになったわたしがいた。正直まだ見慣れないなと思ったけど、美容院の鏡に映る自分の顔は、恥ずかしそうで嬉しそうに笑っていた。
必要ないものは我慢しようと努力していた海外生活の中、久しぶりに自分に許可を出せた瞬間だった。
もちろん髪型が変わったからといって、中身が急に変わるわけじゃない。相変わらずだらだらする日も多い。
でも毎朝、洗面所で顔を洗って鏡を見る。見慣れてきた髪がくるくるしている自分に出会うと、今日も楽しいことがありそうな気がする。真っ赤なリップも塗ったら「今日もかわいいね」と声をかけたくなる。
パーマは、今のわたしらしさになった。ただのわたしがなりたかった、くるくるパーマに赤リップの女の子。
そんなわたしになってから、自然と少し変わった。
着たくて選ぶ服。これまでのモノクロだけじゃなくて、カラフルなものも選ぶようになった。明るい黄緑のバック、青いTシャツ、赤ボーダーの半袖ポロシャツ。どれもとてもお気に入り。
社会人になってから遠ざかっていたランニングを再開した。専用のシューズを買い、練習をして、マラソン大会に出た。10kmを完走した。そういえば、走るのが好きだったことを思い出した。
控えていた外食にも行く機会を増やした。食べたことのない国のお店を選ぶようになった。どんな料理なんだろう?とワクワクしながら注文する。食べた後は、他の国も気になって、次のお店を探す。
そして、ずっと学びたかったことを、海外にいながらオンラインで学ぶことを決めた。自分の興味のままに学ぶことがこんなに楽しいと、久しぶりに思い出した。
パーマのおかげで、わたしの気持ちをもっと大切に思えるようになった。
なんの肩書きもないけれど、少しずつチャレンジを続けられている、今のわたし。
そんなわたしは、すごくわたしらしいと思う。
来週また、パーマをかけ直す。たぶんこれが海外で最後の美容院。
また少し、変われる気がしている。もっとわたしを好きになれる予感がする。
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