「当たり」から始まった恋。2年後の私はあなたとの未来を信じている

夏が来ると私たちが初めてデートした日を思い出す。帰り道、一緒にコンビニのアイスを食べて帰った。横断歩道で信号待ちをしている時、彼は「当たり〜!ほら、見て!」と屈託ない笑顔を見せた。
社会人4年目になった頃、好きだった先輩に勇気を出して告白した。「このままの関係性でいたい」と玉砕し、私は恋愛なんてもういいやと、一人の時間を楽しむつもりでいた。
そんな中、趣味で参加していたバレーボールサークルで彼と出会った。年齢も職業もバラバラな中、私と彼は同い年だと後の飲み会で知る。彼は笑うと目尻にシワができ、口を大きく開けて笑う少年のような人だった。仲の良い友人たちとゲームをしたり飲みに行ったり、よく会うようになったある日、「今度2人でご飯行こうよ!」と誘ってくれた。
正直、乗り気ではなかった。先輩に振られたばかりで新しい出会いを求めていなかった。でも同い年だし、恋愛ではなく友達として会えるかもしれないと行くことにした。実際に会ってみると、緊張せず話せて自然に笑える自分がいた。彼がご飯をご馳走してくれたので、申し訳なくて割り勘を提案すると「コンビニでアイス買って!」と笑い、当たり付きのアイスを選んだ。「当たった〜!見て!」と嬉しそうに笑う彼につられて、私も笑っていた。
その後も何度か彼と会うようになった。ある日カフェで、彼がまっすぐな目で「正直、気になってる。社会人になって異性とご飯に行ったことはあるけど、また行きたいって思えたのは初めて」と伝えてくれた。私は少し目を逸らしながら「最近まで好きな人がいて、まだ忘れられない」と素直に答えた。彼は「そうなんだ」と言って、困ったように笑った。
また別の日、食事のあとに家まで送ってくれた彼と夜道を歩いていると、立ち止まって一呼吸してから「大事にします。僕と付き合ってください」と告白してくれた。私は突然の告白に驚いて即答できず、「考えさせて」と伝えるのが精一杯だった。
家に帰り、彼との時間を思い返した。先輩以上に彼を好きになれるのか。もし好きになれなかったら、誠実な彼を傷つけてしまう。そんなことはしたくない。たくさん悩んだ末、やっぱり笑っている彼を近くで見ていたい、誰かの隣じゃなく、私が隣にいたいと思った。
数日後、彼の好きな野球選手がノーヒットノーランを達成。私は彼を思い出し、LINEを送った。「今日は21時に終わるよ」と返事が来た。ついてる、と思った。仕事終わりの彼と待ち合わせ、歩いた先は、あのアイスを食べた横断歩道だった。
心臓がバクバク鳴る。赤信号のタイミングで「私の彼氏になってくれませんか?」と伝えた。3秒ほどの静寂のあと、「よっしゃーーー」と満面の笑みでガッツポーズする彼。「今日は僕にとって最高の1日だよ」と笑ってくれた。
あの告白からもうすぐ2年が経とうとしている。彼の好きな野球選手はアメリカで今も活躍している。私も彼との新生活が始まった。
あの日から変わらず愛を伝えてくれる彼。仕事が終わるとまっすぐ帰ってきてくれる彼。夜中に地震が来たとき、飛び起きて私の頭を守ってくれた彼。
彼と過ごすうちに、たくさんの優しさを知ることができた。これからももっと知っていくのだろう。彼と家族になる日が来ることを、心から楽しみにしている。
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