成人式。母の振袖と祖母の帯に彩られ、大人の仲間入りを

成人式、何着る?19歳の女子の定番の話題。男子と違って女子は成人式に大変な熱量とお金と時間をかける。自宅にも大量のカタログやチラシが届くようになり、振袖について、髪型について、ネイルについて……たくさん、真剣に考える。
母の実家に振袖が2着ある。母と、叔母さんが成人式で着ていたものだ。叔母さんの振袖は黒と白の絞りで、大きな梅が描かれている。とても豪華で、華やかだ。一方母の振袖はからし色で、桜の模様が織り目として入っている。遠くからだと無地っぽく見えて地味だからやめなさいよ、と母は言っていた。祖母も、叔母さんのものにしたらどう、と言った。良い生地だし柄も豪華だよ、と。
だが、私は母の振袖が着たかった。絞りの柄が豪華すぎて、似合うか不安だったというのもある。でも、単純に、からし色があまりにも綺麗で、気に入ったのだ。それに、母の振袖であるという事実も、私に着てみたいと思わせた。
そこで私は、違う帯を組み合わせることを提案した。祖父母の家には留袖なども保管してあり、帯だけなら他の候補もあったのだ。一通り見せてもらい、私が選んだのは、黒地に赤や緑、金など色鮮やかで大きな刺繍が入った帯だった。大正ロマンのような独特の色合いで、からし色の振袖によく映えると思ったのだ。実はそれは、祖母の成人式の時の帯だった!そんな古いのやめなさい、と言っている祖母の顔がほころんで見えたのは気のせいかな。
春に、前撮りをした。散々迷った挙句、前撮りでは2着とも着ることにした。要するに、決められなかったのだ。2着着るとなると、時間も費用も倍近くになってしまう。こんなに我儘を言ったのは初めてかもしれない。しかも、服に関して。幸い、振袖をレンタルするよりは安いからいいよ、と両親は言ってくれた。
どうせ着替えるならと、髪型にもこだわった。黒白の絞りを着る時は髪を結って、からし色では下ろす。着付け師さんが無茶な計画にも乗ってくださったのでありがたかった。ネイルチップは自作したのだが、振袖の雰囲気に合わせて2パターン用意した。
来たる成人式、一体どちらを着ようか。前撮りが終わってからも散々考えた。今のところ、叔母さんのを借りようと思っている。理由は、そっちの方が大人っぽく見えたから。着る前は似合うかどうかを心配していたが、これに関しては杞憂だった。もちろん、母の振袖もとても素敵だった。母は地味だと言っていたが、帯を変えたこともあり、そんなことはなかった。桜の織り目は写真でもはっきりと見えて、可憐な雰囲気を演出していた。
着たかった母の振袖。成人式本番では着ないかもしれないが、前撮りで着て良かった。納得して成人式の振袖を決めることができたし、祖母の帯との夢のコラボまで実現した。この歳になって我儘を言うとは思わなかったが、妥協せずに言ってよかった。
母のからし色の振袖は、大学の卒業式で袴に合わせて着ようかな。紺色によく合うだろうし、桜模様だし。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。