夏が私を大胆にし2週間で捨てられクズ男を見分けられるようになった

彼と出会ったのは高校生だったけど、21歳の春に再会した。
クラスが分かれてから、彼は高校を辞めていた。それきり疎遠になっていたが、S N Sで繋がったことで私たちの時間は動き出した。彼のS N Sを見た形跡を残しておくと、すぐに彼のほうから友達申請が来て、連絡を取り合うようになった。
彼との綺麗な思い出に補正がかかっていたのか、思えば最初から彼に気があった。再会して盛り上がっていたのも、恋心と錯覚させるには充分だった。S N Sでやり取りを始めてからとんとん拍子で会うことになり、お互いその気はあったと思う。
疎遠になっていた空白の時間を埋めるかのように、私たちは沢山話した。仕事の話、趣味の話、そして恋愛の話。お互い恋人がいないことを確認し合った。酒好きという共通点も見つけて、次に会う口実を作ることも忘れなかった。
2度目に会う頃には、すっかり汗ばむ季節になっていた。気温が上がると共に、どこか私たちは大胆になった。
居酒屋集合だったこともあり、1度目に会うときと雰囲気を変えて、カジュアルな服装を選んだ。少し大胆に、肩の出る服にした。
2軒目を探しぬるい夜風を浴びながら歩いていると、彼は私の肩に視線を向けた。
「それは肩出す感じの服すか?」
「どっちでもいいみたいな感じ。どっちがいい?」
「肩なんか出したら刺激が強いっすよ」
そこで私は肩を出しながら、彼に上目遣いで言った。
「じゃあ出そうかな?」
彼は照れたように顔を背けた。
それからさらに歩くと、彼は足を止めた。
「ちょっと頭痛いかも、2軒目無理そう」
「え、大丈夫?無理しないで」
そこでそのまま帰ってもよかったのだが、私は止まらなかった。
「無理はしないでほしいけど……もうちょっと一緒にいたいな?」
彼はまたしても顔を背けた。
「可愛すぎっすよ……」
それから時間を置かず、彼から告白された。ファーストキスを彼にあげたのもその日だった。
そうして付き合うことになった私たちだったが、たった2週間で別れた。彼は実は女性恐怖症で、治ったと思っていたが私と付き合うことで再発したと言った。
そのときは本気でその言葉を信じて、悲しみに暮れた。私たちは好き同士なのに、一緒にいることはできないのだと思い、苦しんだ。今思うと、なんて素直で騙しやすい女なんだと呆れる。友達や先輩に彼との話をするうちに、女性恐怖症なんて嘘で、ただ捨てられただけだと気づかされた。
でもそこで立ち止まってばかりの私ではない。その恋愛で学ぶことは多かった。クズ男を見分けられるようになって、今は優しくて素敵な人と付き合っている。だからあの恋愛は私の人生に必要なものだったと思うし、あの恋愛を後悔していない。
そんな恋愛ができたのも、夏が私を大胆にさせたからだ。
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