右肩上がりでとどまるところを知らず、体重が増え続けている。さて、着る服がなくなってきた。でも多少太っていても着られる服がある。ワンピースだ。時期はちょうど夏。暑くなってきたので、涼しいワンピースは大活躍である。

暑くなくなってから何を着るかは、今は置いておこう。それまでに痩せたい、手持ちの服を着られるくらいには。いや、無理か。夏は新陳代謝が落ちて痩せにくいのだ。という言い訳のもとに、また太りそうでもある。果たして私はどこまで太るのか、若干興味津々な自分もいる。

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ワンピースのおかげで一件落着、とはいかなかった。ワンピースを着て歩くと、太ももと太ももが擦れて痛い。とてもじゃないくらい痛い。お風呂に入れば浸みるくらい、皮膚が擦れてしまった。いわゆる股擦れというやつだろう。一応ペチコート(下スカート)を履いているのだが、ふわっとしているので絶妙に地肌と地肌が擦れる部分がある。

ペチコートのようにふんわりとしたものではなく、スパッツのようにピチッとしたものでないと防げなさそうだ。でも夏にピチッとしたスパッツを履くのは嫌だなぁ。そう思いつつ股擦れが痛くて仕方ないので、夏用のひんやり素材のスパッツを購入した。これで股擦れとはおさらばできたが、ひんやり素材とは名ばかりで全然ひんやりしないし、スパッツのピッタリ加減が窮屈だ。

そんなわけでワンピースの快適さがスパッツで二割くらい減ってしまった。でもワンピースに勝る涼しい服装はなく、今の私に着られる服も少なく、ワンピースばかり着ていた。鮮やかな花柄のワンピースと真っ青なワンピース、グリーンのワンピースの3つがスタメンだ。

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私は以前、鬱状態がひどい時期があった。その時、鬱の経験がある人に「気分は変えられないけど、服は簡単に変えられるわよ」と言われた。だから明るい色の服を着ると良いよということだったのだが、それ以来、服だけでも明るくが私のモットーになっている。季節的なものも相まって、我が家のクローゼットの中では夏服がいちばん明るい。

そういうこともあって明るい色のワンピースがほとんどなのだ。そうしてワンピースばかり着ていたら、意外にも会う人会う人に褒められる。素敵なワンピースね、と。私のワンピースは太っちょ隠しであり、鬱のごまかしなのだが、褒められると素直にうれしい。

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夏でも町ゆく人はそんなに明るい服を着ているわけではなく、なんだか私だけお祭り野郎みたいだなと思っていたのだが、褒められて自信が付いた。そんなわけで数年着ていないお気に入りのワンピースを着ようとクローゼットから引っ張り出した。

このワンピースは紺地に白い水玉模様で前開き。少し大きめの水玉が非常にレトロでかわいらしい。綿素材なので着心地も抜群だ。私はこのワンピースを夏のお嬢さんと呼んでいる。お気に入りだが、かわいらしいが故に着るタイミングが掴めず、着ないままシーズンアウトしてしまっていた。

でも今の私は違う。別に特別な日じゃなくてもかわいらしいワンピースを着ても良いのだ。そうして夏のお嬢さんワンピースに袖を通すと、袖しか通らなかった。前開きのボタンが締まらない。若干、予想は出来ていたのだが、お気に入りが着られなくなっているとメンタルダメージも倍増だ。

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まぁ、でも、久しぶりに着てみようかなと思えた自分を褒め称えたい。そうやって少し気持ちが上向いた勢いで、痩せる方向に持って行きたい。だが、そんな多少の気持ちの変化では痩せられそうにないくらい太ってしまったし、痩せづらいお年頃になってしまった。でも、この上向いた気持ちを無駄にしたくはなく、とりあえずプールに行く準備をした。今日は無理だけど、この夏の間には行けるだろう。

今日はまだ着られる別のワンピースを着て、お祭り野郎のような鮮やかさで街へ繰り出した。