1月から6月まで、デンマークの学校に留学し、7月はデンマーク国内の別の街でホームステイをした。そして今、合計7ヶ月のデンマーク生活を終え、日本へ帰国する飛行機を待っているところだ。

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33歳の私が留学に行きたいと思ったのは、幸せな国上位であるデンマークで実際に過ごしてみたいという興味もあったが、「留学が終わって『楽しかった!』って言いたい」からという理由も大きかった。

大学生のときに英語圏へ4ヶ月留学していたが、当時尖りまくっていた私は周りを寄せ付けず、一緒に派遣された学生たちに牙を剝きまわっていた。そして帰国して迎えにきてくれた父に向かって開口一番「ぜんっっっぜん、楽しくなかったわ!」と言い放った。安くない留学費用を出してもらっておいて、あれはなかったと今でも時折思い出して反省している。

7ヶ月間デンマークで過ごして、デンマーク文化の授業を受けて、ルームメイトを始めとするデンマーク人生徒やステイ先の家族とたくさん話をした。戦争、教育、文化、食べ物、考え方。話し続けて一番感じたのは、自分の教養のなさだった。

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最初は、自分の英語力のせいだと思っていた。外大の英米語学科まで卒業したくせに、英語圏に留学までしていたくせに、ろくに英語を聞き取れないし、言いたいことが喋れない。なんとか頑張って簡単な単語を聞き取って、脳内でそれっぽく解釈するまではいいものの、何と返したらいいのかがわからない。わからないけど相槌は打ちたいから「ハーハン?」みたいな、適当だけどそれっぽい相槌をひたすら打ち続け、相槌だけはどんどん上手くなっていった。

もし日本ハーハン選手権なるものがあれば、割と上位に食い込めるんじゃないかと我ながら思うほど、私のハーハンの発音とバリエーション、それに伴う表情(納得ハーハン、怪訝そうハーハンなど)はとても上手い。

ハーハン相槌はさておき、話し終わって一人になったとき、さっきの会話が英語じゃなかったら、適当な相槌なんて打たずにちゃんと会話を成り立たせられたのか考えた。

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答えはすぐ出た。できない。私は世界の歴史も日本の歴史も知らなさすぎたし、日本の文化や教育システムについても上手く答えられない。そもそもをちゃんと知らないからだ。百歩譲って知らないことは良いとして、たとえば「日本の政治についてどう思ってるの?」と聞かれても、やっぱり答えられない。

現在の日本の政治を知らなさすぎるのだ。かといって昔の政治もわからない。政策名は聞いたことあっても、それがどういう意図があるかなど、まったく答えられない。私は33歳の、立派な大人(のはず)だ。でも、この事実に気付いたとき、とても恥ずかしくなった。私は世の中の多くを知らなさすぎる。

対してデンマーク人たちは、私と正反対だった。私が相槌を打ち続けているということは、その分彼らは自分の意見をしっかり私に伝えていたということだ。残念だが、私の相槌の上達具合がそれを象徴している。

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それでも、自分の考えや「日本はどうなの?」との質問にうまく返せなくても、私は彼らと喋るのが好きだったし、それぞれの意見を聞くのも好きだった。有り難いことに、もう一度会って喋りたいと思える人たちが多かった。それだけで、大学生のときとは違って、私の留学生活は実りあるものだったと胸を張って言える。

しかし、やはり課題は残る。英語力はもちろん、教養がなさすぎるのは大きな問題だ。働かなければならないので、毎日みっちり勉強! とはいかないが、本や動画で勉強して、少しずつでも教養を身に着けるのが帰国後の課題だ。次に彼らと再会したとき、上手すぎるハーハン相槌はそこそこに、彼らとディスカッションするのを目標に掲げて。