高2の夏、大好きな部活に行けなくなって、私のテニス人生は幕を閉じた

夏の風物詩である蝉すらも夏バテするような、今年の夏。
暑くて暑くて、口を開けば「死にそう…」が口癖になっていた学生時代に比べると、私の死にそうな夏は、かれこれもう10年くらい来ていない。
働き始めてからは特に、外出先で暑くなればカフェに入るし、ハンディファンも常持ち、二の腕の太さなんか気にせずタンクトップを着られるくらいに成長した。
快適だ。本当に快適。
でもあの頃の目に染みる汗が、今は少し懐かしく思う。
学生時代の6年間、ほぼ毎日大好きだったテニスをして過ごした夏。夏休み明けは別人かのように日焼けして、将来シミになるかも…なんて1ミリも考えず、日焼け止めを塗るのも惜しむくらいテニスに打ち込んだ。
意識高めの3年間を過ごした中学時代。
上下関係のしっかりした【学生生活】に憧れていた私は、だいぶ嫌な先輩だったなと今では思うくらい熱くて、テニスが大好きで、何より部活の仲間が大好きだった。
人間関係に悩んでテニスができなくなった高校時代。
憧れていた上下関係の厳しい学生生活は、もう中学の3年間で燃え尽きていた。仲良く、楽しく、ほどほどにテニスをしたくて入部した高校のテニス部。そんな私の魂胆とは裏腹に、県大会入賞を目指すほどの実力のある先輩たちに囲まれて、揉まれて、泣きながらテニスをした。
決定的な出来事は、そんな熱血な先輩と揉めたことでもなければ、仲の良かった同級生が退部したことでもない。2年目から顧問になった新任の先生とうまくいかなかったからだ。
自分でもなぜうまくいかなかったのかはわからない。
本当にただ、自分と波長が合わなかった。ただ、それだけ。
私は高校2年の夏休み明けから引退まで、部活に行かなかった。いや、行けなかった。
泣きながら「もう部活に行けない」と思った帰り道のことは今でも思い出す。
私の熱くて、苦しい日々は、部活に行かなくなったことで、一瞬で消え去った。
Tシャツから汗が滲み出るほどの汗もかかなくなり、放課後は同じクラスの友人と少し話してから、真っ直ぐ家に帰る。田舎すぎて寄り道できるところはない、ひたすら続く田んぼ道と沈んでいく夕日を眺めながら、「明日は行ってみようか」と「明日も行けない」を行ったり来たり。
そうこうしている間に、あっという間に引退の日を迎えた。
あの日から、気づけば約1年、時間は過ぎていた。
私を追いかけて苦しめていた【行かなければならない部活】が【引退】という事実によって、綺麗さっぱりなくなった。私の青春は甲子園でも、グラウンドでも、体育館でも輝かなかった。誰からの声援も浴びることなく、私のテニス人生は静かに幕を閉じた。
大人になって目に染みるほどの汗はかかなくなった。
キャラクターものの汗拭きタオルも、シーブリーズも、汗拭きシートも、8×4も。あの頃の私にとって欠かせなかったものたちは、私のカバンからは無くなった。暑くて「死にそう」なんて、今の私が口にすることはもう二度とない気がする。
あの時のやりきれなかった心残りの気持ちと、もうあんな苦しい思いはしたくないという気持ちが行き交う中、そんな私は今、人生で2回目の「もう行けない」日々を過ごしている。
挫折を覚えた17の夏。乗り越えられなかった私はまだ、10年前の私に後ろ髪を引かれている。
それでも夏が来れば、私のあの「死にそう」な夏を思い出す。
1年の半年くらいがほぼ夏のようになってきたこの気候変動の中で、私のもう二度と戻らない、時間が止まったままのあの夏を思い出す。
そんな夏を思い出しながら、私は今日もカフェに行く。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。